「クルマで助けられる人がまだまだいる」と語る吉澤武彦代表理事
岡山県倉敷市真備町での災害支援による車両貸し出しの後、返却に訪れる利用者の様子
熊本県人吉市の豪雨被災復旧活動に利用される協会の車両
災害への平時からの備えをつくるモデルケースとなった岡山県での連携協定の様子

 日本カーシェアリング協会(吉澤武彦代表理事、宮城県石巻市)は、第1回CSP大賞2021の自動車ユーザー連携賞を受賞した。

 同協会は、2011年に発生した東日本大震災の被災者向けに、車両貸与を通じて「足の確保」を中心とする生活支援を行うことを目的に発足した。その後、高齢者などの移動支援にとどまらず、災害で他地域への転居を余儀なくされた住民へのサポートや近隣同士の支え合いを構築するきっかけを創出するなど活動の幅を広げてきた。

 一方で、近年多発する台風、豪雨、地震による大規模災害の被災者支援でも全国各地に出向き、被災者などの移動手段を確保する車両を無償で貸し出す活動も開始した。CSP大賞では、これらの長年にわたる継続的かつ発展的な活動が評価された。

 吉澤代表理事は「従来は震災復興関連や地域関連の活動が多かったが、受賞を契機に自動車関連業界に認知されるようになった。当協会の活動のために連携したいのは自動車業界であり、自動車メーカーや販売店、カー用品メーカーや陸送業界など、すでにいろいろと協力を頂いている。今後は、より一層業界全体の皆さんと一緒に考えながら活動していく必要があるだろう。ちょうど活動の幅を地元の宮城県から全国に拡大していく時期だったので、受賞により他地域での活動説明を行いやすくなった」と受賞の影響を振り返る。

 同協会の事業資金は、助成金関連と寄付金が約6割を占め、NPOへの車両貸し出しなどの有償事業は4割に止まる。支援活動の継続には事業採算性の安定的な確立が必須だ。被災者支援に止まらず、自治体と連携して社会福祉領域への車両の貸し出し拡大を模索するなど、協会活動の安定的な維持を可能にする方策を探る。

 今後の抱負について吉澤代表理事は「石巻では協会活動を事業化できたので、他地域での活動展開も可能だろう。現在の被災者支援活動は対症療法の領域にとどまっているが、災害が増え続ける現状では、東日本大震災規模の災害に対応可能な仕組みを構築したい」と力を込める。

 「車を寄付する」という選択肢を生み出した同協会は、車両の貸し出しを切り口とした被災者支援としてのセーフティーネットのさらなる強化を目指す一方で、台風到来時などに車両の被災を防ぐ「車の避難ルール」の啓発活動にも注力していく方針だ。