ショーファーカーに対するニーズが変化しており、発表会ではスライドドア仕様も披露した

 トヨタ自動車は「センチュリー」の新車形投入を機に超高級車市場の開拓に乗り出す。国産車唯一のショーファーカー(専属の運転手を持つオーナー向け車)としての地位を築いたが、近年はセダンより室内空間が広いSUVやミニバンへと需要がシフトしている。

 車両価格が2千万円を超える高級車市場では特にこうした傾向が顕著だ。センチュリーもこうした需要に応えるとともに、販路を海外にも広げて販売増を狙う。

 センチュリーに追加した新車形は車両価格が2500万円(消費税込み)と、トヨタブランド車として最高額だ。SUVタイプのショーファーカーでは、ロールス・ロイス「カリナン」(4250万円~)やメルセデス・ベンツ「マイバッハGLS」(3010万円~)、ベントレー「ベンテイガ」(2450万円~)などがある。新型車もこうした超高級車市場が主戦場となる。

 トヨタがSUVモデルの超高級車を投入する背景にはショーファーカー市場の変化がある。中嶋裕樹副社長は「ショーファーカーとしてのターゲットは変わらないが、世代の変化に合わせてバリエーションを用意しないといけない」と話す。オーナーが後席に乗ることを前提としたショーファーカーは、乗り心地や安全性の高さから長らくセダンが主流だった。しかし、近年は室内空間がより広く、乗降性や積載性に優れるSUVやミニバンが求められる傾向にあり、トヨタでもセンチュリーから高級ミニバン「アルファード」に代替するケースが目立つ。半世紀以上の歴史を誇り、最盛期には年間2千台以上を販売したセンチュリーだが、足元の販売台数は当時の10分の1まで落ち込んでいる。

 こうしたショーファーカーに対するニーズの変化は世界的な傾向で、海外の高級ブランドも多様な車形を展開し始めた。センチュリーは国内専用車だったが、新車形は海外でも販売する。海外の超高級車市場に参入することで、伝統的なセダンを含めたセンチュリーブランドを後世に引き継いでいく狙いもある。

 トヨタはまた、アルファードの上位モデルにあたるレクサス「LM」を国内にも投入する計画だ。センチュリーの新車形も含め、超高級車市場の開拓へ本腰を入れる。