ホンダは「N-VAN EV」の実証を始める
三菱自動車は「ミニキャブ・ミーブ」を現地生産する

 軽自動車を海外に展開する動きが広がっている。三菱自動車は2024年にインドネシアで電気自動車(EV)の「ミニキャブ・ミーブ」の生産を始め、ホンダも軽EVの実証を開始する。スズキはすでにパキスタンで軽規格のガソリン車を導入済みだ。国内市場は人口減少などで縮小する可能性が高い。電動車シフトを追い風に国内専売の軽も活路を海外に見いだす。

 ホンダはインドネシア国営石油会社のプルタミナと提携し、軽EV「N―VAN EV」を使った実証を9月から始める。プルタミナが手がける小売り部門の商品配送にEVを使用し、高温多湿下でのバッテリーの耐久性や充電マネジメントなどを3カ月にわたって検証する。ホンダ自身も補修部品の配送に軽EVを試す予定だ。

 商品化の予定は決まっていないが、ホンダがインドネシアで実証を実施する背景の一つには「日本だけで軽ビジネスを成り立たせるのが難しい」(ホンダ現地法人の幹部)ことがある。

 国内の軽自動車市場は1980年に年間100万台を突破した後、右肩上がりで成長し、2014年にはピークの227万台に達した。現在も市場全体の約4割を占めるが、今後は人口減少に加え、燃費や安全などの規制対応によるコスト上昇も避けられず、日本専売車として生き残る条件は厳しくなる。

 三菱自で「ミニキャブ・ミーブ」「eK」シリーズなどの商品企画責任者を務める藤井康輔チーフプロダクトスペシャリスト(CPS)も「軽で採算を確保するために海外展開は今後、考えなければいけない課題だ」と話す。

 三菱自は24年にミニキャブ・ミーブをインドネシアで現地生産するとともに、乗用EV「eKクロスEV」を生産する検討も始めた。EVで先行する中韓勢に対抗するとともに、スケールメリットを軽事業に生かす。

 軽の海外展開では、スズキが18年にパキスタンで同社として初めて軽規格車の海外生産を始めた。しかし、スズキ以外は現地生産や販売はほとんど事例がないのが現状だ。日本独自の軽規格は「オーバースペックになる部分もあれば、現地の交通環境には性能が不十分な部分もある」(ホンダ現法幹部)と、他国の車格と合わせづらいからだ。ダイハツ工業は過去に「コペン」を輸出したことがあるが、現在は軽そのものではなく、軽と共通化率を大幅に高めた小型車プラットフォームで軽のコストを間接的に減らす手法に転じた。

 しかし、電動化で自動車の使われ方が多様化する中、短距離移動と相性が良く、コスト面でも有利な軽EVなら海外で受け入れられる余地がありそうだ。各社は、現地政府がEV導入の旗を振るインドネシアやタイなどの新興国をターゲットに〝第2市場〟の形成を狙う。