地域ぐるみで支える「チョイソコひさえだ」(出発式)

 ネッツトヨタ瀬戸内(平松龍一社長、松山市)は、久枝地区まちづくり協議会とともに、定額制送迎サービス「チョイソコひさえだ」を運行している。公金投入ゼロで、利用者と地元企業が支え合い、公共交通の不便な地区での外出機会創出に成果を上げている。

 松山市久枝地区は、住民約2万人の約3割が高齢者。地区を囲むように鉄道が通り、縦断するバス路線はあるものの、公共交通の不便なエリアが多く、買い物や通院など日頃の外出が困難という声が上がっていた。

 地域全体で支援の在り方を話し合う中、久枝地区まちづくり協議会とネッツ瀬戸内などが連携することになった。2021年1月、トヨタ・モビリティ基金の助成を得て、定額で乗り放題の乗合タクシーの無償実証実験を開始し、同年7月に有償運行を開始した。

 ネッツ瀬戸内は、利用者の予約を受け付け、送迎場所を確認してタクシーを配車するオペレーション業務を担っている。アイシンが開発した「チョイソコ」で、複数の利用者の乗車依頼から最適な乗り合わせとルートを算出。車両運行は地域のタクシー会社が担当する。

 22年3月、利用者50人に聞き取り調査を行った結果、3割が「外出回数が増えた」と回答した。外出目的は「買い物・通院」のほか、「友人とのカラオケ」「体操教室の参加」など、趣味や娯楽を目的とした利用もあった。また、同乗者同士の交流が生まれ、外出パターンの多様化がみられたことも含め、高齢者の健康増進への効果が確認された。

 地域の自治体が移動問題の解決策を支援するケースは多いが、ここでは行政の支援を得ることなく、利用者と地元企業が支え合うことで持続可能な運行を具体化したのが特徴。この運営・移動の仕組みを「久枝モデル」として横展開し、22年5月から松山市小野・久米地区で「チョイソコおのくめ」の有償運行が開始されるなど、他の地域へも広がりをみせている。