ニデック(旧日本電産)が、「eアクスル」事業の確立を急いでいる。市場開拓の先兵役と位置づける中国市場は電気自動車(EV)の補助金制度が昨年末で打ち切られ、価格競争も本格化する。先行投資負担もあり、2023年3月期の車載事業は営業赤字に終わった。次世代モデルへの移行を早めて採算改善を図るとともに、〝中国一本足打法〟から脱却して数量拡大を目指すが、シナリオ通りにいくかは不透明だ。

 「商圏をこれまでの中国中心からグローバルへ広げる」。25日の決算会見で、永守重信会長兼最高経営責任者はこう語った。同社はeアクスルの販売目標として「30年に年間1千万基」を掲げるが、このうち4割以上は欧州、北米向けにする計画だ。同社の試算によると、30年の新車販売におけるEV、プラグインハイブリッド車(PHV)の占有率は、中国が56%なのに対し、欧州は80%を超える見込み。欧州では23年度から受注を見込んでおり、北米向けは30年度には全体の1割程度を占める計画だ。

 投資負担が重いこともあるが、eアクスル事業は当初の想定より苦戦が続く。ニデックの23年3月期の連結業績は、売上高が前年同期比16・9%増の2兆2428億円となり過去最高を更新した。車載事業も同24・4%増の5196億円と増収だったが、営業損益は422億円の赤字だ。22年度第3四半期に想定していたeアクスルの販売台数に対し、実績が9万台近く下回る33万9千台にとどまるなど、下期の失速が響いた。価格競争が早くも激化する兆しもある。

 反転攻勢に向け、23年度はeアクスル事業の採算改善に取り組む。現在展開する第1世代は販売台数を優先したことで収益性が低い。今年度は第1世代の原価低減を進めるとともに、新たに投入する第2世代の割合(数量ベース)を全体の7割にまで引き上げ、営業黒字化を目指す方針だ。さらに第3世代は従来計画(26年3月期)を1年前倒して市場投入する。

 24年3月期は売上高2兆2千億円(前年度比1・9%減)、営業利益2200億円(同119・8%増)を見込む。ただ、この予想はeアクスルや駆動用モーターなど車載事業の収益拡大が条件だ。永守会長は「今は口でガタガタ言っても信用されない」とも語った。今期の車載事業が注目される。