負極の劣化(図b)の大幅低減に成功した(図d)

 物質・材料研究機構(NIMS)とソフトバンク、光学ガラスメーカーのオハラは、20サイクル以上の充放電が可能なリチウム空気電池を開発したと発表した。これまで課題だった寿命について、負極の金属リチウム電極の劣化が主原因と特定し、軽量な固体電解質膜を用いることで実現した。リチウム空気電池はリチウムイオン電池の数倍の重量エネルギー密度を持ち、電気自動車(EV)などへの活用が期待されるが、充放電サイクル寿命が課題だった。

 従来は酸素正極反応での高い過電圧が低いサイクル寿命の原因と考えられてきた。3者は電池内部の反応を先端分析で解析した結果、正極での溶媒の分解反応などに伴って発生した、水や二酸化炭素(CO2)などの「副反応生成物」が金属リチウム電極負極を劣化させていることを解明した。

 そこで3者は6マイクロメートルの固体電解質膜を搭載したところ、負極の劣化を防ぎ、充放電サイクルは20回以上に向上した。2018年にNIMSとソフトバンクが開発した500ワット時/キログラム級電池のサイクルタイムは10回以下だった。

 3者は今後も開発中の新規材料群を搭載し、サイクル寿命のさらなる向上を目指すとしている。

(2023/2/7修正)