自動運転や電動化などに伴う事故や故障などの未然防止と発生時の適切な対応を図る

 自家用乗用車の点検・車検時に行う確認項目の見直しが進んでいる。検討の軸となるのはOBD(車載式故障診断装置)を活用した新たな確認方法の導入だ。電子制御装置を数多く搭載した自動運転技術搭載車や電動車などの普及に伴う事故、不具合・故障の未然防止と発生時の適切な対応を実現する狙い。今後増加が見込まれる電気自動車(EV)の点検方法・項目のあり方も課題に挙がる。

 OBDを活用することで、電子的な故障を検知した場合、関連装置の「故障」と判断し、その情報を車載コンピューター(ECU)に記録することができる。OBDで確認可能な項目は「制御プログラムの異常」「カメラ、レーダーのずれ」などの電子的に故障を検知できるもの。一方で、「ブレーキの制動力」「車体のさび・腐食」などはOBDによる検知は不可能で、整備士などによる目視での確認が必要だ。

 これまで各構造装置の摩耗や劣化、損傷など外観を点検する項目が主だった定期点検項目に、「原動機、制御装置、アンチロック・ブレーキシステム、エアバッグなどに係る電子制御装置」の機能確認を昨年10月に追加し、1年ごとの点検が義務化された。電子制御装置に故障がないかなどの診断結果がOBDに記録されており、それをスキャンツールや識別表示を用いて点検し、必要な整備を行うことになった。2024年10月からはOBD車検の本格運用が予定されており、新たな検査においては保安基準不適合となる故障コードが記録されている場合は検査不合格となる。

 国土交通省は、昨年8月に「自動車の高度化に伴う安全確保のあり方検討会」を設置。車検時の確認方法について見直しを検討し、今春に中間とりまとめを発表した。その中で、自家用乗用車の車検時の確認項目78項目のうち、7項目の見直しを決めた。

 OBDを活用した確認方法も可能とするのは、「駐車ブレーキ機構の引きしろ」「トランスミッション・トランスファのオイル漏れ、オイル量」「燃料蒸発ガス排出抑制装置のチャコール・キャニスタの詰まりと損傷、チェック・バルブの機能」「タイヤの空気圧」。

 一方で、確認項目から削除するのは「点火装置の点火時期とディストリビュータのキャップの状態」とした。機械制御式から電子制御式に移行してきたことから削除する。

 自家用乗用車の車検項目の見直しで、各構造装置の劣化や損傷、外観など従来は整備士などが目視で確認・点検していた項目に、OBD活用による確認を導入するのは今回が初めて。確認項目を削除するのも同様に初めてとなる。

 同検討会では、自家用乗用車の車検時における既存の確認方法を見直してきたが、今年度も引き続き検討を行うものとして18項目を挙げている。残り53項目は検討の結果、変更しないものと判断した。ただし、今後の技術進展に応じて見直しを検討する方針だ。

 また、今後増加が見込まれるEVの点検項目のあり方も検討を進めた。自動車メーカーなどからEVに関する点検項目の動向調査を行い、その結果を基に自家用乗用車のEVに特化した点検項目を策定。現行の自家用乗用車の日常点検基準と定期点検基準のうち、該当する項目について、「EVに特化した新たな点検基準の設定が必要なもの」または「EVでは点検基準の設定が不要となるもの」に分類した。

 今後は該当点検基準に加えて、関連する手引きの作成を行う。整備事業者団体で駆動用バッテリー、充電コネクター・ケーブルなどをEV向け推奨点検項目として整理していることや、一部の自動車メーカーで絶縁抵抗モニタリングシステムや充電装置などを点検項目と設定していることも踏まえて手引書の作成に向けた検討を行う。また、今後の技術関連動向やEVの普及に伴う使用実績データの蓄積などにより適宜内容を見直す。

 自動運転技術搭載車や電動車の普及拡大を背景に、各種センサーの数量増加が予測されていることなどから、OBDで収集できるデータは今後さらに増加する見通しだ。特に、レーダーセンサーやセンシングカメラは、先進安全システムの中核センサーとして市場の拡大が見込まれている。自動車の技術進展を踏まえながら、OBDで確認可能な項目はどのようなものがあるのかを適宜分析する必要がある。

 近年の点検整備では、スキャンツールを使って車両から読み取った故障コード(DTC)を基に故障原因を探求する必要性が高まっている。個別DTCが発現した際にその原因や解決方法を把握することの重要性も増している。

 その一方で、自動車の高度化に伴う技術の複雑化とともに、収集できるOBDデータが増加したことで、使用過程における不具合・故障発生時の車両状態の理解と把握が難しくなってきている。

 法定点検項目のうち一部のものはOBDを活用した代替方法がある一方で、OBDを活用できないものもある。こうしたことや自動車の技術進展なども踏まえながら、国交省では車検時などでのOBDを活用した新たな確認方法の導入や、EVに特化した点検項目の見直しを引き続き進める考えだ。