富士経済(清口正夫社長、東京都中央区)がまとめた車載ディスプレーパネルの市場予測によると、世界市場は2026年に21年比23・8%増の123億2300万㌦(約1兆6636億円)を予想する。コックピットに先進的なデザインを取り入れる電気自動車(EV)の普及やヘッドアップディスプレー(HUD)、電子ミラーなどによって車載ディスプレー市場が成長する。

 22年の車載ディスプレーパネルの世界市場は、21年実績と比べて5・0%増の104億5300万㌦(約1兆4112億円)に達する見通し。大型ディスプレー化や、EV向けに複数のパネルを組み合わせたディスプレーを搭載するケースが増える見込み。

 ルノーが欧州市場で販売開始した新型EV「メガーヌE―TECHエレクトリック」には面積が774平方㌢㍍のL字型ディスプレー「オープンRスクリーン」を搭載している。ダッシュボードに12・3㌅のディスプレーとセンターコンソールに12・0㌅の縦型ディスプレーを配置する。

 また、メルセデス・ベンツはEVのフラッグシップモデル「EQS」に全幅141㌢㍍ル、ディスプレー面積が約2430平方㌢㍍の「ハイパースクリーン」を採用した。

 日本の自動車メーカーでは、ホンダの量産型EV「ホンダe」のインパネには5つのディスプレーが配置してある。また、ホンダと中国の東風汽車の合弁会社である東風ホンダのEV「e:NS1」には、15・1㌅大型ディスプレーオーディオを搭載する。EVの先進性を追求することもあって、大画面の車載ディスプレーを採用するケースが目立つ。

 ディスプレーパネルの需要増加に伴って構成部材市場も成長する。市場予測では26年に構成部材の世界市場が21年実績と比べて49・1%増となる8億6800万㌦(約1172億円)に拡大すると予想する。

 ディスプレーメーカー各社は、車載向けディスプレーニーズの多様化に対応するため、先進運転支援システム(ADAS)のアラートなどを表示するAR(拡張現実)HUDなどの開発を加速している。カーナビや、電子ミラーなど向けに新部材や新技術を開発して市場拡大をけん引する構えだ。

 ジャパンディスプレイは、ディスプレー向けに新しい有機EL「イーリープ」を開発した。従来品に比べ省電力で、デザインの自由度も高めた。統合コックピットやHUDなどでの活用を想定しており、自動車メーカーや部品メーカーへの売り込みを本格化している。マクセルはサイズを約半分に小型化した「ネオHUD」を開発した。搭載スペースが限られる軽自動車やスポーツカーへの採用を見込む。

 製品の供給体制を拡充する動きもある。HUDの旺盛な需要に対応するため、日本精機はポーランドに工場を新設した。

 車載ディスプレーのパネルにスマートフォン(スマホ)と同様の操作感を求めるニーズも高まっている。富士経済はスマホで実用化している静電容量式タッチパネルが今後、車載向けにも採用が拡大すると予想する。26年の車載ディスプレー用静電容量式タッチパネルの世界市場は21年比74・5%増の29億8500万㌦(約4029億円)と予測する。次世代自動車のトレンドであるEVや自動運転車では、乗員に提供する情報量が増える。このため、車載ディスプレーや構成部材の世界市場は今後も成長する見通し。