韓国・現代自動車が12年ぶりに日本の乗用車市場に再参入する。日本法人のヒョンデモビリティジャパン(李正旭社長、横浜市西区)は8日、電気自動車(EV)と燃料電池車(FCV)のゼロエミッション車(ZEV)で国内市場に参入すると発表した。直営の「カスタマーエクスペリエンスセンター」を展開するが、オンライン販売が基本で、点検・整備は協力工場に委託する。5月から注文の受付を開始し、7月以降デリバリーする。2021年の世界販売台数が666万台と、世界シェアが5位前後の現代自グループにとって鬼門だった日本市場にZEVで挑む。
日本市場には、21年デビューしたSUVタイプのEV「アイオニック5」と、FCVの「ネッソ」の2モデルをまず導入する。アイオニック5は72・6キロワット時バッテリー搭載モデルの航続距離が618キロメートル。国内での販売価格は補助金なしで479万~589万円に設定した。ネッソは776万8300円(消費税込み)。
販売はオンラインのみとし、車種、グレード、カラーやオプションの選択、試乗予約、購入、新車の配達先設定をアプリで完結するサイトを開設する。今夏には購入希望者の相談やアフターサービスに対応するカスタマーエクスペリエンスセンターを横浜市内にオープンするのを皮切りに、順次、展開していく。アフターサービスを委託する提携工場は導入開始までに10拠点確保する。
現代自ブランドの浸透を図るため、DeNA SOMPOモビリティ(馬場光社長、東京都渋谷区)が手がけるシェアリングサービス「エニカ」のシェアカーとして年内にもアイオニック5を100台、ネッソを20台配車する予定。試乗体験を通じてブランド認知度アップを図り、販売に結び付ける。今後、販売を支援するサブスクリプションサービスなどの金融商品も設定する。
現代自は01年に国内の乗用車市場に参入したものの、ブランド力が低いことなどから販売が低迷、09年末に撤退した。一方、現代自グループは米国、中国、インドなど海外市場で販売を伸ばし、世界でも中堅クラスの自動車メーカーのポジションを確立している。
同日、都内で実施した記者会見で加藤成昭マネージングディレクターは「政府によるカーボンニュートラル政策やインフラ整備、補助金制度などによって環境対応車に需要が見込める」としている。ヒョンデモビリティジャパンは日本市場への再参入に向けて社名を従来の「現代自動車ジャパン」から変更した。現代自に対するイメージ刷新を図って日本市場でZEV専業で攻略する方針だ。