交通事故死者数2千人への削減を目指しさらなる取り組みが不可欠

 警察庁がまとめた2021年の交通事故死者数(発生から24時間以内)は、前年比7・2%減の2636人だった。統計が残る1948年以降の過去最少を5年連続で更新。緊急自動ブレーキなどを備えた「安全運転サポート車(サポカー)」の普及に加え、新型コロナウイルス感染症による行動制限も被害者削減に一役買ったとみられる。このうち65歳以上の高齢者の犠牲者は同4・8%減の1520人に減少したが、死者数全体に占める割合は57・7%で過去最高となった。交通安全の悲願とされる「死亡者ゼロ」の実現には、高齢者対策が重要な課題であることが改めて浮かび上がった。

 21年の死者数はピークだった1970年の1万6765人に比べ、6分の1未満になった。先進安全装備の一部が標準化されたことも後押しし、サポカーへの代替が進んでいる。自車や周囲のクルマの運転状況を記録する「ドライブレコーダー」の普及もドライバーの安全意識の向上に役立ったとみられる。車両とドライバー双方で交通安全対策が進んだことで、交通事故の発生件数も同1・2%減の30万5425件まで減少した。これに伴い、負傷者数も同2・1%減の36万1768人となっており、事故件数と死傷者数は平成以降で最も低い水準にとどまった。

 交通事故や死傷者数の減少は、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う人流減も要因となったもようだ。政府は2021年1月から「緊急事態宣言」や「まん延防止等重点措置」を発令し、国民に移動の自粛を要請してきた。こうした中、クルマによる移動も減ったことで、交通事故も減少した。宣言や措置は9月末をもって全面解除。これ以降の月別死者数の推移をみると10月273人、11月251人、12月284人。いずれも解除前の1~9月の平均203人を上回っており、移動の状況と交通事故発生の相関性を示す材料となっている。

 交通事故や死者数が減る中で、高齢者対策のスピードアップ求められている。ここ数年の死者数をみると、全体の状況と比べて高齢者の減少率が小さい傾向にある。近年は高齢ドライバーの操作ミスによる重大事故の発生も目立つ。このため、警察庁では今春にも高齢ドライバー対策を強化。75歳以上で一定の交通違反歴がある場合、運転免許の更新時に実車による「運転技能検査」を義務付ける。高齢ドライバーの運転操作を補うサポカーに限定した新たな免許制度もスタートさせる。こうした取り組みにより、高齢者の犠牲者発生に歯止めをかける狙いだ。

 政府は25年までに年間の交通事故死者数を2千人以下に抑える方針を打ち出している。ただ、現状は20年の目標としていた2500人を上回る水準となっており、達成には取り組みの強化が求められる。このため政府は、まず将来の自動運転時代を見据えて国際規格づくりにも力を注ぎ、事故減少に対する自動運転の効果を最大限に引き出すことを目指す。また、減少傾向にある死者数に比べ、事故で重度後遺障害を負う人の数はほぼ横ばい状態となっている。こうした重い障害を持つ被害者の救済事業を拡充することも決めており、さまざまなアプローチで交通事故を取り巻く課題を解決していく構えだ。