素材は従来から求められる軽量化と低コスト、「+α」の性能が求められる(写真は帝人の「マルチマテリアルバッテリーボックス」)

 素材メーカー各社が、自動車の軽量化や強度にとどまらず新たな機能を付加した素材の提案を強化している。自動車の技術革新とともに、素材に求められる性能も複雑化が進む。「軽い・安いに加えて他の機能が従来にも増して求められる」(帝人)傾向にあり、特殊な素材を扱うことも増えるためモノを売るだけでなく、技術を組み合わせた提案も必要となる。

 特に車体部品では、自動車メーカーが電動化や自動運転などの技術進展にリソースの投入が進むことで、材料をプレスし、ボディーを造る領域への投資が減ると指摘する声もあがっている。鉄鋼メーカーでは、自動車メーカーと連携して培ったノウハウを生かした設計やシミュレーションなどを含めたソリューションビジネスを各社は加速していく考えだ。

 石油化学素材を手がけるメーカー各社は、自動車向けへの展開として、金属では実現できない複雑成形などを武器に部品サプライヤーや自動車メーカーに訴求している。

 こうした樹脂特有の性能を電気自動車(EV)分野でも生かせるとして、バッテリーパックでは帝人が樹脂と金属を用いたマルチマテリアル製品を開発、実用化している。ランクセスは高強度な熱可塑性プラスチックを用いたオール樹脂のバッテリーハウジングの試作を開発。軽量化に加え、耐衝撃性、設計の自由度、製造工程の削減などの付加価値で勝負に出る。

 自動車自体の構造進化により、部品などの高機能化が進む中素材への要求条件は「難しくなっている」(同)。それでも、自動車産業でのシェア拡大に向け、各社はソリューションや新たな付加価値の提供で存在感を高めていく。