マツダは4日、一般道路を含めてドライバーの異常検知して自動で退避する先進安全技術「コ・パイロット」を開発したと発表した。一部モデルで先行して実用化されているドライバー異常時対応システム(EDSS)は運転支援システム作動時に機能するのに対し、コ・パイロットではドライバーの運転を常時モニタリングし、異常を検知すると高速・一般道路を問わず自動退避する。第1弾として2022年に市販するラージモデルに搭載する。ドライバーの異常時に助手席から車両を自動停止させるボタンも乗用車に初めて装備する。高齢者などのドライバーの疾患や体調急変による事故が大きな社会問題となる中、マツダはこれら悲惨な事故を防止する先進技術の実用化を急ぐ。
開発したコ・パイロットは、ドライバーの居眠り状態や急な体調変化などによる運転操作の異常を検知、警告しても運転を継続できないとシステムが判断した場合、自動で車両を停止するシステム。22年に実用化するコ・パイロット「1・0」は高速道路上では車線維持または路肩に退避して自動で停止。一般道路では車線を維持した状態で自動停止する。
25年以降に投入する予定の「2・0」では、脳科学の知見を採り入れ、ドライバーの異常を予見する。異常を予見するとドライバーに警告した後、高速道路上では路肩や非常停止帯に自動で退避して停止する。一般道でも安全な場所に自動で退避して停止する技術を実用化する。
マツダがこだわるのは一般道路での退避機能だ。交通事故総合分析センターによると、発作など体調急変による事故は95・8%が時速60㌔㍍以下で発生しており、コ・パイロット開発担当の栃岡孝宏主査は「体調急変に対応する安全技術は一般道路もカバーする必要がある」と強調する。
トヨタ自動車の「アドバンスド・ドライブ」やスバルの「アイサイトX」などは、高速道路上での運転支援機能の作動時、EDSSが機能する。コ・パイロットでは自動運転・先進運転支援システムとは一線を画する形で普及を図るため「一般道路でも高速道路でも退避機能を作動させる」(栃岡主査)ことにこだわった。
システムの異常検知機能は、医療関係者と協力して開発した。運転中のドライバーが発作を起こす90%を占めるとされる、てんかん症状についてのデータを収集・解析し、ドライバーモニタリングカメラと、運転操作それぞれのデータから異常を判断する。2・0では異常が起こる前の予兆を検知できるよう、脳機能が低下する際の視線の変化など、正常と異常の差分から判断する。2・0技術試作車には、高精度地図やカメラ12個を搭載して退避技術を開発しているが、必要なセンサー数と技術レベルを今後バランスさせ、コストを抑えて実用化する。
ドライバーの異常を検知してから自動運転に切り替わるシステムとなるが、マツダでは自動運転車とは一線を画す形で開発してきた。クルマで走行する楽しさを追求しつつ、交通事故ゼロの社会の実現を目指しているためだ。マツダの栃岡主査は「運転を止めてしまうと介護が必要となるリスクが2倍になるというデータがある。運転が健康維持につながる」とする。今後もドライバーが運転の主体となる先進安全技術の実用化に注力する方針だ。