タイで生産するカローラクロスHV

 トヨタ自動車が東南アジアで電動車の販売を拡大している。2020年にSUV「カローラクロス」のハイブリッド車(HV)の生産を開始したタイや、これを輸入するインドネシアでHVの販売が伸長している。年内にマレーシアでもHVの現地組み立てを開始する計画だ。タイでは日産自動車がHV、三菱自動車がプラグインハイブリッド車(PHV)を現地生産しているほか、中国自動車メーカーも電気自動車(EV)の生産に乗り出すなど、東南アジアで電動車比率が高まりつつある。域内で高いシェアを持つトヨタは強みを持つHVを軸に、電動車の普及を主導する方針だ。

 トヨタは30年をめどにグローバルでの電動車販売800万台を見込んでいる。これを達成するには、グローバル販売の1割以上を占めるアジア(中国を除く)での電動車販売を増やすことが重要で、東南アジアで電動車の生産・販売体制を拡充する。

 鍵を握るのがアジアで最も生産台数が多いタイだ。タイではHVを現地生産しており、19年5月にはHVに搭載する電池パックの現地組み立てを開始。20年にはカローラクロスにHVを設定した。コロナ禍の影響でタイでのトヨタ車全体の20年の販売が前年比26・5%減となる中、HVの販売は同17・2%増と大幅に増加し、HV比率は前年から3㌽上がって8%となった。HV比率は今年に入り1~6月実績では10%程度にまで達している。

 タイでは電動車やバッテリーの現地生産に対する投資優遇措置が実施されており、トヨタや日産、三菱自など、自動車メーカー各社が電動化投資を積極化している。また、HVは物品税の減免措置が適用されるため、ガソリン車との実際の購買価格の差が縮小している。トヨタのアジア地区を統括するトヨタダイハツエンジニアリングアンドマニュファクチャリングのプラス・ガネシュ氏は「すぐに手に入る電動車として受け入れられている」と、HV市場の伸長を予想する。

 インドネシアもカローラクロス投入効果で今年1~6月のHV販売台数は1千台を超え、前年同期の2倍となる水準に伸びている。現在、インドネシア市場の電動車は海外から輸入しているが22年からHVの現地生産を開始する予定で、ここからの輸出も視野に入れる。マレーシアでも今年10月以降、HVの組み立てを開始する計画で、東南アジアでの電動車の現地生産を拡大する。

 PHVやEVに関しては、タイやインドネシアに市場投入するものの、価格が高いことから普及は限定的とみており「電動車の現実的なソリューションとしてはHV」(ガネシュ氏)とする。一方で、中国系自動車メーカーは、EV奨励策を打ち出しているタイでEVの生産・販売体制を拡充している。東南アジアは伝統的に日本の自動車メーカーのシェアが高い。HVを前面に打ち出すトヨタをはじめとする日本のメーカーと、EVで攻勢をかける中国系との、次世代エコカーをめぐる主導権争いが激しくなりそうだ。