ヤマハ発動機は19日、2050年に二輪車の世界販売の90%を電気だけで走行する車両にする方針を発表した。30年をめどに商品投入を本格化し、35年までに20%に引き上げて50年目標の達成につなげる。残りの1割は、ハイブリッド車(HV)や合成燃料の活用などで対応する。ヤマハ発動機の事業領域の中で最も多くの二酸化炭素(CO2)を排出する二輪車部門の電動化技術開発を加速し、カーボンニュートラルの実現を目指す。二輪車を含む企業全体のCO2排出量の削減に向けて新しい環境技術を開発するためのファンドも新設する。

 ヤマハ発は今回、50年に自社で排出するCO2排出量を10年比で86%減、ライフサイクルでのCO2を90%削減する方針を掲げた。残りの排出量はカーボンオフセットの仕組みを活用するなどしてカーボンニュートラルの実現を目指す。従来はライフサイクル全体のCO2排出量を50年までに半減させる目標だった。

 カーボンニュートラルの達成に向けて重要な鍵を握るのがヤマハ発の製品を使用する際の排出量の65%を占める二輪車だ。

 二輪車の電動化に向けては、「少量だからこそ難しい」(日髙祥博社長)電池の確保を課題とし、従来から日欧の二輪車メーカーで標準化の検討を進めている交換式バッテリーの実用化に向けた開発を加速するほか、固定式バッテリーでも他社との共同購買を視野に価格を抑えた電気駆動バイクの開発を加速する。特にファンバイクの領域では航続距離などの課題も少なくないが、全固体電池の採用に向けた検討も進める。同時に電気への置き換えが難しい二輪車のために合成燃料の適用に向けた研究を急ぐ。

 二輪車のCO2削減を電動化で進める一方、そもそも1人が移動する際の排出量が少ない小型モビリティの普及を促進するため、四輪車と二輪車や二輪車と電動自転車の中間に位置するモビリティを商品化する。

 環境技術の開発を加速するための自社ファンドも米シリコンバレーに22年に立ち上げる。運用総額は1億ドルで運用期間は15年。ファンドの新設で環境資源分野に特化したベンチャー企業との接点をつくり、環境技術の高度化を図る。四輪車以上に高い壁になる二輪の電動化を加速し、カーボンニュートラルに向けた「サバイバル」(日髙社長)で生き残りを図る。