初代に比べてそれぞれの専用部品を増やした結果、1つのクルマながら異なる個性を実現
エンジンは2.4リットル水平対向「FA24」を搭載。D-4Sの採用によりほぼ新設計となった
AT車には新たに「アイサイト」を採用した
異なる個性を実現するための差別化は車体部品にまで及んだ(写真はBRZの車体構造)
GR86は「FRらしさ」、BRZは「AWDのような安定感」にこだわった(写真はBRZの走行イメージ)

トヨタ自動車とスバルは、新型「GR86/BRZ」(プロトタイプ)のメディア向け共同試乗会を袖ケ浦フォレストレースウェイ(千葉県袖ケ浦市)で開いた。開発でこだわった走りの違いを体感してもらうのが狙いだ。スポーツカーは、モータースポーツ活動を通じて広告塔の役割を果たしたり、クルマ好きを増やすなど自動車メーカーにとっても欠かせない車種の一つだが、事業採算を確保しにくいのが悩みの種だ。1つのクルマに2つの個性を持たせることに成功したGR86/BRZがスポーツカー事業の好事例になりつつある。

アライアンスだから実現した性能とコスト

2代目となる新型車も初代と同じように企画とデザインはトヨタ(ガズーレーシングカンパニー)が、設計開発はスバルが担った。生産はスバル群馬製作所の本工場(群馬県太田市)が受け持つ。

エンジン排気量を従来の2リットルから2.4リットルに増やしたほか「インナーフレーム構造」というスバルの技術を使い、車体剛性を高めた。エンジンはスバルの水平対向「FA24型」だが、初代に続きトヨタの直噴技術「D-4S」を組み合わせる。スバル商品企画本部の関井誠主査は「吸気系だけ改良したと思われがちだが、D-4Sがついているエンジンが他にないので、ブロックも含めてほぼ新設計だ」と語る。適合コストを考えると、アライアンスだからこそできた芸当とも言える。

スバルの運転支援技術「アイサイト」を初めて自動変速機(AT)車に採用したこともニュース。「トヨタセーフティセンスも検討したが、電子プラットフォームや制御などの課題もある。価格や必要な機能を吟味した結果、アイサイトになった。これもアライアンスの良いところだと思う」(関井主査)。両社の技術を適材適所で持ち寄り、クルマに仕立てたわけだ。

では、2代目でこだわった「走りの違い」とは何か。トヨタはFR(後輪駆動)ならではの操る楽しさを、スバルはAWD(全輪駆動)のような安定感を狙ったという。ただ「BRZが楽しくない」というわけではない。スバル車両開発統括部の藤井忠則主査は「BRZはよりスタビリティ(安定性)を上げ、走りの余裕や上質な乗り心地などワンランク上のスポーツカーを狙った。乗ってもらえば、運転が上手くなった感じがするはず」と話す。