GR86とBRZ

 トヨタ自動車がスポーツカーの生き残りをかけて他社との連携を広げている。走行性能が重視されるスポーツカーは一般的な量産車と車台を共有しにくくコストがかさむ。CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)投資も膨らむ中、トヨタは他社との共同開発や生産委託で「86(ハチロク)」や「GRスープラ」を世に送り出した。共通車台であっても自車の特徴を明確化するノウハウも確立しつつある。

 トヨタとスバルが86と「BRZ」の2代目モデルを開発中であることを公表したのは2019年9月。それから約1年半後の今年4月、両社合同で開催した新型車の発表会でトヨタが強調したのは「こんな時代にスポーツカーを守っていこう、という熱い思いで生み出した」(トヨタガズーレーシングカンパニーの佐藤恒治プレジデント)という開発の背景だった。

 投資効率が低いスポーツカーが下火となる中、FR(フロントエンジン、リアドライブ)スポーツカーを市場に投入するために開発費や生産に必要なコストを折半できる共同開発の手法を取ったのが初代の86/BRZだ。生産工場はスバルが軽自動車を生産していたラインを活用し、品質管理や在庫管理などでトヨタ生産方式(TPS)も採り入れた。初代モデルの累計販売台数は86が20万台超、BRZが約9万台の合わせて約30万台に達した。

 約9年ぶりに全面改良した両モデルは、排気量拡大や低重心化、ボディー剛性向上といったスポーツカーとしての性能の深化に加えて、トヨタとスバルがそれぞれ求める企画に沿い、両車で異なる個性を持たせることに注力した。特にトヨタのスポーツブランドである「GR」の名を冠した新型86は、マスタードライバーでもある豊田章男社長がGRとしての走り味を実現するために 量産直前でダメ出しするというこだわりもあった。

 19年に投入したGRスープラは、BMWとの共同開発、マグナ・シュタイヤー社への生産委託という枠組みによって17年ぶりに復活を果たした。86以上に台数が限られる高級スポーツカーのスープラでは、少量でも採算に乗せるよう知恵を絞った。骨格と諸元を決めた後は、トヨタとBMWでそれぞれチームを分け、デザインも別々に進めた結果、クローズドボディーのスープラとオープンモデルの「Z4」という、趣(おもむき)の全く異なるスポーツカーに仕上がった。

 トヨタのスポーツカー開発における協業の枠組みは子会社のダイハツ工業にも広がっている。2シーターオープン軽スポーツのダイハツ「コペン」をベースに、トヨタのモータースポーツ活動などで得た知見を採り入れてボディー剛性向上や足回りをチューニングした「コペンGRスポーツ」がそれだ。スポーツカーの普及に向け、開発や生産の垣根を越えていくトヨタの姿勢が垣間見れる。

 スバルの藤貫哲郎常務執行役員CTO(最高技術責任者)は「スポーツカーはこれからも残していかないといけないし、育てないといけない。ただ、それは1社だけではできない。2社集まることで続けられるのであれば、どんどんやっていきたい」と語る。

 トヨタは「ロードスター」を手がけるマツダや、「スイフトスポーツ」を生産するスズキとも組む。消費者の期待が高まれば、こうしたアライアンスによるスポーツカー事業がさらなる広がりを見せるかもしれない。

(福井 友則)