モノ造り革新はマツダが成長してきた原動力となった(写真はMX-30のEVモデル)

 マツダが電気自動車(EV)シフトを本格化するなど、環境戦略を見直す。「環境規制に対する国の動き、規模、スピードが加速している」(丸本明社長)ことから、2030年の電気自動車(EV)の販売比率を、当初想定していた5%から25%に引き上げ、EV投入計画も見直す。急速な電動化に向けて頼りにするのがマツダが成長してきた原動力となった「モノ造り革新」だ。しかし、知見の少ない電動化技術にもうまく生かすことができるのか、危うさもはらんでいる。

 マツダは環境戦略として販売するエリアの電源構成などのエネルギー事情などを考慮して、材料やエネルギーの資源採掘から車両を廃棄するまでLCA(ライフサイクルアセスメント)の観点で二酸化炭素(CO2)排出量を最も抑えられるモデルを市場ごとに選んで投入する「マルチソリューション」を軸に据えてきた。このため、EVやロータリーエンジンを搭載して発電機に使用するレンジエクステンダーのEV、プラグインハイブリッド車(PHV)、ハイブリッド車(HV)など、さまざまなタイプの電動車を取りそろえる計画を掲げる。

 環境対応車の開発には多額のコストが必要となる。財務基盤がぜい弱で、研究開発投資も限られるマツダが全方位に近い形の電動車を取りそろえることに自信を示す背景にあるのが、06年から推進してきたモノ造り革新だ。複数のモデルの基幹部分をまとめて開発する一括企画や、全てのモデルの設計思想を統一するコモンアーキテクチャー構想によってクルマづくりをフレキシブル化して開発効率も向上できる。これら開発手法を本格的に採用して12年から展開してきた新世代商品群の販売が好調に推移し、マツダの成長の原動力となってきた。

 マツダは30年までに販売する車両のすべてを電動化する計画を掲げるが、モノ造り革新を活用して開発コストを抑制しながら電動車両のラインアップを拡充する方針だ。当初計画では30年の電動車両の内訳としてPHVとHVが95%、EVが5%と見込んでいた。昨年末から世界中でカーボンニュートラルに向けた動きが加速、EVの市場拡大が想定よりも早く到来する見方が強まる中、マツダは30年のEV販売比率25%を想定して商品戦略を見直す。モノ造り革新によってマツダ車の設計思想は統一していることから、新型車の開発スケジュールの見直しなどもある程度、柔軟に対応できる。欧州市場に投入したマツダ初の量産型EV「MX―30」が、EV市場が小さい日本市場にはマイルドハイブリッド車の投入を先行できたのも、モノ造り革新による成果だ。

 ただ、長年の研究開発で培った多くの知見を持つ内燃機関と異なり、経験の浅い電動車両の開発が計画通り進まない懸念もある。マツダは19年に、FRラージプラットフォームの投入時期を22年度に1年延期を発表したが、その最大の理由となったのがPHVを設定するためだ。モノ造り革新を採り入れても、慣れない電動車の開発では想定外の問題が生じるケースもある。

 電動車両のキーデバイスであるリチウムイオン電池の調達にも課題を抱える。世界の自動車メーカー各社が電動シフトを本格化する中、将来的に車載用電池の争奪戦が繰り広げられるとの見方が強まっており、大手自動車メーカーは電池メーカーと提携して調達先を確保している。EV専業のテスラは電池を内製化する。マツダはアライアンスを組むトヨタ自動車を頼りにしているのかもしれないが、トヨタ自体も電動化を本格化しており、他所へ回すほどの余裕はない状況に陥る可能性もある。マツダでは「これまで各電池サプライヤーと多くの仕事をしてきた。これらを考えながら将来を考えていきたい」(藤原清志副社長)としており、危機意識は低いが、電池不足で電動化が遅れるリスクは拭えない。

 自動車業界にカーボンニュートラルという大波が押し寄せる中、EVシフトを一歩前進させたマツダ。モノ造り革新での成功体験を、電動化時代にも生かすことができるのか。マツダは重大な岐路に立たされている。

(編集委員 野元政宏)