マツダが市場投入した「MX-30」EVモデル

 マツダが電動シフトへの対応を迫られている。日本政府が2050年のカーボンニュートラルを宣言するなど、世界的に脱炭素社会に向けた動きが加速し、エネルギー分野も含めて温暖化ガスである二酸化炭素(CO2)排出量を削減する機運が急速に高まっている。これまで、普及も見据えたより現実的な環境対応として内燃機関車の燃費改善を重視してきたマツダは、想定より早いペースでの変化に焦りの色を隠せない状況だ。

 「電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)を含めて電動化が想定を超えるペースで進んでいるのは間違いない」(マツダ・工藤秀俊執行役員・R&D管理・商品戦略・技術研究所担当)。

 マツダが28日に国内市場に投入した「MX―30EVモデル」は、主に欧州の厳しい環境規制に対応するために開発した初の量産型EVで、昨年9月に欧州市場に投入した。国内市場にはマイルドハイブリッド車を先行投入。EVの販売が多くは見込めないためで、当初は法人向けリースによる限定的な販売を予定していた。それが一般販売に踏み切ったのは、想定していた以上に電動化対応の圧力が高まっているためだ。

 マツダは、環境対応車を取りそろえるため、MX―30にロータリーエンジンを発電機として活用するレンジエクステンダーモデルと、ラージモデルのPHVを22年に市場投入する計画だ。さまざまな電動車のニーズに対応する「電動化マルチソリューション」戦略を進めている。電源構成がCO2排出量の多い火力や石炭による発電比率の高い国では、EVが必ずしも環境に優しいとは言えないためだ。

 EVに搭載される大容量リチウムイオン電池は製造時にも大量のCO2を排出する。マツダは資源採掘から廃棄まで車のライフサイクル全体でのCO2排出量で見る「ライフサイクルアセスメント」(LCA)を重視してきた。現在の多くの国の電源構成から見て、内燃機関の燃費改善がハイブリッド車(HV)、PHVにも生かされ、普及の障壁も低いことから、より現実的なCO2排出量削減につながると主張、内燃機関の燃費改善に注力してきた。EVの普及には懐疑的で、30年でもマツダのEV販売比率は全体の5%にとどまると予想していた。

 しかし、世界的に脱炭素社会に向けた動きが加速し、状況は変わりつつある。欧州や米国の一部地域で、25~40年にかけてガソリン車の新車販売を禁止する政策が相次いで打ち出され、HVの新車販売を規制する動きもある。さらに、カーボンニュートラル化に向けて、各国政府が電源構成で洋上風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーの比率引き上げを打ち出すなど、エネルギー転換が急速に進む可能性も出てきた。実現すれば「LCAの観点からEVが環境に優しいとは言えない」という主張は通用しなくなる。搭載する電池についても、将来的には電源構成が非石油由来比率の高い地域で製造された電池を調達するなど、調達方針に品質やコストだけでなくLCAの観点も採り入れるといった見直しも余儀なくされる。

 すでに中国や欧州でEV市場は急速に伸びている。「EV、PHVの普及は加速しており、1年ごとに変化しているので予測は難しいが、増えていくことは間違いない」(工藤執行役員)状況だ。想定以上のスピードで電動化が進む可能性がある中、マツダは電動車ラインアップの拡充に加え、電動化比率の変動に柔軟に対応するための生産設備の汎用化・フレキシブル化に着手する。

 EVに距離を置いてきたマツダ。脱炭素社会に向けて、エネルギーや環境対応車を取り巻く環境がハイスピードで変化する中、戦略の練り直しを迫られる。

(編集委員 野元政宏)