神戸製鋼所は11日、2023年度を最終年度とする新中期経営計画を発表した。安定した収益基盤の確立とカーボンニュートラルへの対応を最優先課題に掲げ、主力の鋼材事業における収益基盤強化など5つの重点施策を実行する。23年度にはROIC(投下資本利益率)5%以上の収益水準を確保する財務目標を掲げた。

 鋼材事業の収益基盤強化では、粗鋼生産量が年間630万トンで安定した収益が確保できる体制を構築する。将来的には600万トンでも黒字を確保できる体制を整える中で、「輸出向けや国内汎用品などを減らし高付加価値製品にシフトし、中身を高採算化していく」(同社)方針だ。高張力鋼板(ハイテン)や線条鋼など特徴のある製品の構成比を、23年度には21年度比7ポイント増の52%に高める。

 電力事業では23年度から年間約400億円の収益を確保できるようにする。今年度下期以降に神戸3、4号機が稼働する予定。神戸1、2号機、真岡1、2号機を含め、23年度からすべての発電所が稼働することで安定した収益確保を図る。

 素形材事業では自動車の軽量化ニーズに応える素材提供で早期の収益化を目指す。21年度から高加工性ハイテンの量産を順次拡大するほか、アルミパネルの量産、アルミサスペンションにおけるものづくり力の強化などを進める。

 一方、カーボンニュートラル対応については、30年目標として生産プロセスにおける二酸化炭素(CO2)排出量を13年度比で30~40%の削減、50年にカーボンニュートラルを実現する目標を掲げた。

 製鉄プロセスでは、高炉におけるCO2削減やフェロコークスといった革新技術の活用に加え、独自技術の天然ガスを使った直接還元製鉄法「ミドレックス」の活用、電炉による高級鋼製造の導入も検討する。

 電力事業では、石炭火力発電においてエネルギー利用の高効率化を図るほか、下水汚泥や食品残さなどバイオマス燃料との混焼、アンモニアとの混焼などでCO2削減の取り組みを推進する。神戸発電所ではアンモニアの混焼拡大を進め、将来的には専焼に挑戦するという。