デジタルと職人技を融合
バスと小トラでランプユニットを共有化

 三菱ふそうトラック・バスは、画一的になりがちな商用車デザインの差別化に注力している。小型トラックや大型観光バスなどのフロント部に統一意匠の「ブラックベルト」を採用して独自性を打ち出すほか、デザインの過程においてデジタル化が加速する中でクレイ(工業用粘土)モデルによる手作業も重視して繊細な〝面〟を表現するなどデザイン品質にもこだわる。商用車を購入もしくは代替する際の動機としてデザインの優先度は乗用車に比べて低いものの、三菱ふそうは単なる輸送手段でなく、社会インフラの一端として街並みにも配慮したデザインにこだわりを見せる。

 三菱ふそうは商用車のデザインプロセスを紹介するイベント「デザイン・エッセンシャルズ」を開催し、本社(川崎市中原区)のデザイン開発拠点を報道陣に公開した。

 三菱ふそうは全世界で約700人のデザイナーが在籍するダイムラーグループの一員として、国際色豊かなメンバー構成の中でデザイン開発を進めている。三菱ふそうとダイムラー・トラック・アジアのデザイン部門を率いるベノワ・タレックデザイン部長は「伝統と機能性を進化させないといけない。デザイン部はブランドを尊重し、明確なビジョンを確立している」と述べ、デザインに強いこだわりを持つダイムラーグループの中で三菱ふそうの〝らしさ〟を追求する開発体制を強調する。

 デザインの独自性を表現するために採用するのがブラックベルトだ。大型観光バス「エアロエース」「エアロクィーン」、小型バス「ローザ」、小型トラック「キャンター」にそれぞれブラックベルトデザインを採り入れる。三菱ふそうの歴代トラックから着想を得たフロントデザインは、異なる車型で意匠を統一しながらも小型トラックと大型バスでラインの太さなどを変えることで異なる印象を生み出しているという。

 商品が顧客の手に渡り外装色などで手を加えられても、ブラックベルトによって三菱ふそう車としてのアイデンティティーが維持される点も狙った。

 ブラックベルト採用車はLEDヘッドライトユニットを共有化している点も特徴だ。複雑な形状のLEDヘッドライトユニットの開発効率化と、量産効果によるコスト削減に結び付けている。

 ダイムラーグループの枠組みでグローバルにデザイン開発を進めるためにデジタル技術の活用も進めている。仮想現実(VR)技術で日本とドイツ、インドなどの遠隔地を結びつける「バーチャル・デザイン・スタジオ」のトライアルを開始した。コロナ禍において国境をまたぐ移動が制限される中、VR技術によって各国のデザイナーが一つの場にアバターで参加し、デザインを検討できるようにした。

 3Dモデリングなどデザインの開発現場ではデジタル技術の活用が進んでいるが、一方で三菱ふそうはフィジカル(物理的)デザインプロセスも重要視する。デザイナーによる二次元のスケッチを3Dモデリングし、それを原寸大にしたクレイモデルでモデラーが手作業で形状を作り出している。三菱ふそうでは30年以上の経歴を持つ日本人モデラーによる職人技によって〝親しみやすさ〟や〝温もり〟といった商用車では難しい表現に挑戦している。さらに手作業によって仕上げたモデルを3Dスキャナーでデジタル化し、デザイナーとのやり取りを幾度と繰り返しながら完成形へと近づける地道な作業を行っている。

 今回のイベントでは、輸送の20~30年後を見据えた「アドバンスデザイン」も披露した。

 未来の緊急車両をイメージしたモジュールトラック「I.RQ」や輸送用ドローン「ヘリドロイド」、ドローンの将来像をイメージした「マンタ」はいずれもコンセプトモデルであり、ドローン事業への参入など今後の開発計画を示すものではないが、先進的なデザイン要素の一部は現在の製品に反映していくという。