HMIの乱立を避け、開発を効率化しようとする動きもある。デンソーは4年前、世界初という統合HMIプラットフォームをカナダのブラックベリー社と共同開発した。HMI機器はそれぞれ基本ソフト(OS)とマイコンで個別に制御されている。両社は特性が異なる複数のOSを1つのマイコンで統合制御できるようにした。これにより、走行状況や危険度に応じた警告の表示や音声を分かりやすいHMI機器を通じて出力したり、メーター画面とセンターディスプレーを連携させたりすることができる。すでに一部の自動車メーカーに採用された。
昨年には米クァルコムとも提携。クァルコムの通信や半導体技術とデンソーの車載HMI技術を融合させ、次世代コックピット開発もスタートさせている。
HMIを進化させるにはヒトの研究が欠かせない。経済産業省所管の産業技術総合研究所は、6年前に「自動車ヒューマンファクター研究センター」を立ち上げ、自動車メーカーや大学、研究機関などと組んで運転特性などの研究を開始。昨春には「ヒューマンモビリティ研究センター」に衣替えし、自動車にとどまらず、歩行から公共交通機関まで幅広いモビリティを対象とした研究に取り組んでいる。研究成果は、参画する自動車メーカーなどに随時、反映されている。
本田技術研究所は2年前、脳情報通信融合研究センター(シーネット)と脳科学を用いたヒト研究を始めた。人間のHMIに対する感じ方などを脳科学を用いてデータ化し、今後のモビリティやロボティクス開発に生かす。ドライバーとクルマが一体化したような運転操作感の実現や、より円滑なHMIの開発を加速させている。
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CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)が日進月歩で進化する中、1台の自動車に積まれるコンピューターの数も急速に増えている。その勢いは「自動車生産が2倍になると搭載されるコンピューターは3倍になる」(関係者)と言われるほどだ。今後もクルマが便利に、安全になるに連れて情報処理量が増え、制御もキメ細かくなるだろう。しかし、運転する人間はさほど〝進化〟せず、油断もすれば過信もし、時には感情を抑えきれなくなる。今は、コミュニケーションの橋渡し役であるHMIの重要性が改めてクローズアップされる局面と言えるだろう。