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 経済産業省が30日に発表した10月の商業動態統計速報によると、自動車小売業の販売額が前年同月比16.4%増の1兆4600億円となり、13カ月ぶりに前年実績を上回った。「普通車や小型車、軽乗用車が好調だった」(経産省)ことが要因で、自動車が小売業全体の伸びをけん引した格好。10月の鉱工業生産指数(速報値)でも自動車工業が5カ月連続で前年実績超えを果たしたほか、新型コロナウイルス感染症の影響前となる今年1月を上回る指数を記録した。自動車産業の回復ぶりが鮮明となっているが、足元では再び感染拡大が目立つなど今後の先行きに不透明感が増している。

 自動車小売業は「11月もプラス傾向にある」(同)とみており、2カ月連続での前年超えも見えてきた。自動車卸売業の販売額は欧州からの輸入減などにより、同7.8%減の1兆4230億円と13カ月連続のマイナスだったものの、前月までの2桁減からは脱却するなど改善を見せた。

 生産や出荷も好調だ。鉱工業生産指数(2015年=100、季節調整済み)を見ると、自動車工業は10月、104.7となり、コロナ禍前の1月実績を0.4ポイント上回った。輸出車両の生産が増えたことなどにより「工場の稼働率が上がっている」ことが要因で、出荷の伸びにもつながった。

 一方、今後の先行きについては、心配な点が増えつつある。経産省が行った調査によると、自動車を含む輸送機械工業の生産計画は11月、12月と前年を下回る見通しとなっている。自動車工業はコロナ禍の中で鉱工業生産全体を引っ張ってきたが、「一服感が見られる」(同)状況だ。

 自動車小売業も前年同期は消費税増税の影響で国内販売に急ブレーキがかかった時期でもあり、前年超えのハードルがそもそも低いのも事実。さらに、足元の新型コロナの再拡大に歯止めがかからなければ、消費者の動きが鈍る可能性も高い。自動車産業が本格的に復調したと言えるまでにはもう少し時間がかかるのは間違いなさそうだ。