コロナ禍の影響で低迷していた自動車輸出が回復しつつある。日本自動車工業会(自工会、豊田章男会長)が30日に公表した8月の輸出台数は、前年同月比22・8%減の26万9953台と、前月よりも減少幅が11・8㌽改善した。コロナ禍からいち早く需要を持ち直した中国をはじめ、国内からの輸出台数が最も多い米国向けが減少幅を縮めた。国内生産の半数近くを占める輸出の回復で、工場稼働も上向きつつある。

 仕向け地別で勢いを取り戻しつつあるのが米国だ。乗用車輸出台数は5月が同80・2%減まで落ち込んだが、6月が同62・7%減、7月には同9・3%減まで急回復し、8月も同7・4%減となっている。トヨタ自動車は11カ月ぶり、ホンダも19カ月ぶりに米国向けがプラスに転じた。マツダは同8・6%増となり、「マツダ3」「CX―9」の輸出が好調だ。スバルも「XV」などが増加し、同30・4%増と大幅に伸長した。

 米国販売は回復傾向を示しているものの、8月実績はトヨタが同22・7%減、ホンダが同21・9%減、スバルが同17・4%減と、現地生産や輸出に比べて回復に若干の鈍さがみられる。これは米国ディーラーが日本と異なり在庫販売を中心とするためで、コロナ禍による生産調整で在庫数が減少し、ディーラーが販売できる〝タマ〟もひっ迫しているためだ。各社とも大市場である米国の回復を見越して、挽回生産を進めている。

 コロナ後の需要増で販売が伸びている中国向けの乗用車輸出台数は、同26・2%増の2万595台と3カ月連続のプラスとなった。トヨタは同21・1%増となり、販売好調を背景に輸出台数も2桁伸長している。

 一方で、主力の米国と中国以外の地域の輸出はいまだ回復には至っていない。欧州向け乗用車輸出台数は同33・3%減の4万8728台と、前月よりマイナス幅は縮まったものの低水準が続いている。アジアも中国を除くと各国で低迷しており、中近東も半減した。国内生産を押し上げる輸出が前年並みの水準に戻るためには、米中以外の仕向地の回復が待たれる。

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 自工会が同日に発表した7月の国内の自動車生産台数は、同22・1%減の69万7867台だった。6月実績に比べ減少幅は14・5㌽縮まり、回復傾向を示した。車種別では、コロナ禍による観光需要の低迷などを背景にバス生産が同60・9%減と大幅に落ち込んだ。