スカイドライブが開発した有人試験機「SD-03」(右)とカーゴドローン(左)
エアモビリティ事業には自動車メーカーも参入している。トヨタ自動車は今年1月、米スタートアップのジョビー・アビエーションと協業すると発表。約430億円を出資するとともに、生産技術や電動化、トヨタ生産方式などのノウハウを共有する
官民の関係者が一堂に会する「空の移動革命に向けた官民協議会」で示された都市における空飛ぶクルマの利用イメージ
災害現場での活用も想定している

 空飛ぶクルマと重量物に特化したドローンを開発するSkyDrive(スカイドライブ、福澤知浩社長、東京都新宿区)が、エアモビリティの社会実装に向けた〝揚力〟と〝推進力〟を高めようとしている。このほど日本政策投資銀行など10社を引受先とした第三者割当増資によりシリーズBラウンド(企業の成長段階に応じた投資段階の一つ)において39億円の資金調達を発表。技術開発を下支えするさらなる資金確保と、サービスプラットフォームを構築するための協業体制を整えた。「2023年の事業開始に向かってさらに開発を進めていく」(福澤社長)考えだ。

 空飛ぶクルマの正式名称は「電動垂直離着陸型無操縦者航空機」。電動化と完全自律の自動操縦、垂直離着陸できることが最大の特徴となる。次世代モビリティの新興企業のみならず、既存の自動車メーカーや航空機メーカーも巻き込み、世界各国で研究開発が行われている状況だ。

 日本では2018年に国が「空の移動革命に向けた官民協議会」を立ち上げ、官民を挙げた取り組みを展開している。経済産業省と国土交通省は23年の事業開始、30年の本格普及に向けたロードマップを示している。

 スカイドライブは18年8月に設立した。空を飛ぶクルマの有志団体「CARTIVATOR」を母体とし、航空機やドローン、自動車エンジニアが中心となり、空を飛ぶクルマの機体開発を続けている状況だ。

 このほど発表した新たな資金調達では、日本政策投資銀行、伊藤忠商事、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、ENEOSイノベーションパートナーズ合同会社、大林組、環境エネルギー投資、STRIVE、日本電気(NEC)、ベリサーブ、三井住友ファイナンス&リースの10社が出資を引き受けた。このうち、伊藤忠テクノロジーベンチャーズと環境エネルギー投資、STRIVEを除く7社が新たな出資元となる。

 スカイドライブがこの10社と手掛けるのは、まさに「空の産業の実現」(同)だ。協業の形はさまざまだが、空を飛ぶクルマを用いたサービスプラットフォームの構築を目指す。

 大林組とは、建築現場におけるカーゴドローンの活用と空を飛ぶクルマのポートに関して協業する。伊藤忠商事とは、国内外での事業化とビジネス化、エネオスとは充電、モビリティポートで連携する方針だ。

 NECとは既存の航空機に加え、ドローンや空を飛ぶクルマが一緒に空を飛ぶことが前提になる際の運行管理システムなどについて協業する。また、三井住友ファイナンス&リースとは空を飛ぶクルマのサービスとリースの領域で、日本政策投資銀行とは国内外の産業のハブという観点で業界全体をリードしていく形でタッグを組む考えだ。

 スカイドライブが23年のサービス開始を目指すのが空飛ぶタクシー。まずは大阪湾岸地区でのスタートを予定している。この地区にはユニバーサルスタジオジャパンや海遊館、大阪万博会場、IR予定地などがあり、年間数千万人が訪れるとの試算もある。

 ただ一方で、行き来は不便だ。例えば、ユニバーサルスタジオジャパンと海遊館は直線距離で5㌔㍍足らずだが、一般道を使うと車でも20~30分かかってしまう。

 この不便さを空飛ぶクルマで解消する。「空を飛ぶことで5分。3分の1の時間で移動できるようにする。往復するタクシー的な形でサービスを開始しようと計画している」(同)という。

 数年後には、神戸空港や関西国際空港から直結させ、外国人観光客がそのまま大阪湾岸地区のエンターテインメント施設に行けるといったコンセプトを実現させる計画だ。将来的には「こうしたモデルを世界に展開していく」(同)と意気込む。

 スカイドライブは重量物を運ぶカーゴドローンも手掛けている。既存のドローンはカメラを搭載して撮影したり、観察したりすることが利用目的だったが、同社のカーゴドローンは重い荷物を持ち運ぶことができるのが特徴だ。電力や土木関係の現場などで活用することで「危険を避けるだけでなく、生産性も飛躍的に上げることができる」(同)。このカーゴドローンについては、すでに発売中だ。

 空を飛ぶクルマを社会課題の解決につなげる方針は、経済産業省と国土交通省が18年に取りまとめたロードマップにも示されている。官民が一体となって取り組んでいくべき技術開発や制度整備などについてまとめたもので、事業者によるビジネス展開は23年のスタートを目標とし、30年代には実用化の拡大を計画している。災害対応や救急にも活用していく方針だ。

 こうした目標を達成するため、機体の安全性や技能証明の基準といった制度の整備、また安全性、信頼性を確保し証明する技術や自動飛行、運航管理、電動推進に関する技術の開発などに関して今後の工程を示している。

(水町 友洋)