愛知製鋼は4日、売上高と営業利益を今より4割増やすグループの2030年ビジョンを公表した。自動車の電動化に伴い先細りが見込まれる特殊鋼や鍛造品事業は高付加価値化や生産性向上を徹底する一方、成長が見込めるステンレス事業や新規事業に集中投資し、収益基盤を強固にする。藤岡高広社長は「生き残りをかけ、大きな方向転換を目指していく」と語った。

 「持続可能な地球環境」「豊かな社会」「従業員の幸せ」といったESG経営方針のもと、「鋼」「鍛」「ステンレス」「スマート」の4カンパニーがそれぞれビジョンをまとめた。特殊鋼を扱う鋼カンパニーは電動化用の新素材を開発したり、出資先の印・バルドマン社を活用したグローバルな鋼材サプライチェーン(供給網)を構築したりする。鍛造品の「鍛カンパニー」は鍛造後の後工程を取り込んで高付加価値化を目指すほか、IT(情報通信技術)やロボットを駆使して生産性を高める。両事業は需要変動に強い体制作りも進める。

 成長を見込むのは「ステンレスカンパニー」と磁石やセンサーなどを手がける「スマートカンパニー」だ。ステンレスカンパニーはインフラの更新需要や水素関連機器の新規需要を取り込む。スマートカンパニーは自動運転用の磁気誘導システムが有望株だ。藤岡社長は「仲間作りは年内にはほぼ終えたい。事業化という形は、来年中には確実なものになる」と語った。

 同社の前期業績は連結売上高2423億円、営業利益139億円。ビジョンの最終年度になる30年には売上高3400億円以上、営業利益200億円以上を目指す。ステンレス、スマートの2カンパニーを合わせた売上高比率を前期の20%から45%へ、営業利益ベースでは約30%から50%へ高める計画だ。

 今後、ビジョンに基づく具体策を中期経営計画に反映させ、達成を目指す。