4社は実証実験の成果を踏まえ基礎技術を確立

 大型車メーカー4社が物流業界の抱える課題の解決に向けて一歩踏み出す。日本自動車工業会(豊田章男会長)は20日、2021年度末までにアダプティブクルーズコントロール(ACC)とレーンキープアシスト(LKA)を大型車4社が商品化すると発表した。これまで取り組んできた隊列走行の実証実験の成果を踏まえ、物流事業者が導入型の隊列有人走行にも使用できる商品を投入する。今後は、ドライバー不足をはじめとする業界課題を本質的に解決するため、両技術の商品化を足掛かりに、車車間通信などを活用したより高度な隊列走行や自動運転レベル4の実現を目指す考えだ。

 政府が2021年までの達成を目指す「より実用的な後続車有人隊列走行システムの商業化」という目標に対する回答としてACCとLKAの商品化を決めた。隊列有人走行は、車車間通信を用いるなどしたシステムも実証実験が進められているが、事業者のコスト負担などを考慮し、まずは両技術をドライバーの負担軽減や安全性向上を図る機能として導入する。

 両技術は、乗用車で普及が先行しているが、大型車は車両寸法のほか、架装の形状や積載量など車両条件のばらつきが大きく、制御が難しいため現時点で搭載しているのはいすゞ自動車と三菱ふそうトラック・バスの2社にとどまる。21年度末までに日野自動車とUDトラックスも新車に搭載し、異なるメーカーの車両を保有する事業者も導入型の後続有人隊列走行を利用できる環境を整える。

 実証実験の成果を取り入れ、協調させた例がACCの車間時間、車間距離の設定だ。従来型の単独開発ではメーカーによってACCの車間時間の設定にばらつきがあったため、隊列走行に使用したとしても渋滞の緩和効果が限定的だった。4社は実証実験の成果を踏まえ、積載量やブレーキ、エンジンの性能など異なる車両でも車間時間を1・6秒程度(時速80㌔㍍で距離30~35㍍)に保てる基礎技術を確立し、ACCとLKAを隊列有人走行にも利用できるレベルに仕上げた。注意義務がなくなる訳ではないが、特に夜間に走行する長距離ドライバーの負担軽減や事故防止につながりそうだ。

 ただ、両技術を商品化しただけでは物流業界の喫緊の課題であるドライバー不足の解消には至らない。物流事業者が人材不足の解消に期待するのは22年度以降の商業化を目指す後続車無人走行、25年度の実用化を目指すレベル4自動運転の実現だ。大型4社は今年度内に車車間通信を使用した高度なACC(CACC)の技術を確立するめどをつけるなど、人材不足の解消に向けた技術開発を急いでいるが、技術・コストの課題に加え、インフラや制度設計の整備と目標の達成に向けた課題は山積する。今回発表した両技術の全社商品化は、その目標に向けた一歩に過ぎず、この先の道のりは長い。

 とはいえ、従来は各社が単独で行ってきた研究開発を4社が協調して実施し、一つの成果を具体化するまでに至った意義は大きい。隊列走行などを担当する大型車技術企画検討会の小川博主査は「ACCやLKAの商品化以上に、4社が『将来の自動化に向けて協調できる技術がある』という確信を認識し合えたことが大きい」と実証実験の成果を強調する。物流事業者の課題を早期解決するため、大型4社は連携関係をさらに強化し、物流事業者、政府、メーカーと三位一体で自動運転の実現を目指す方針だ。

◇用語解説

 〈隊列走行〉 複数台の車両が列をなして走行する形態。隊列走行のレベルは、運転支援技術による「導入型後続車有人隊列」、先頭車の指示で後続車の自動車線変更もできる「発展型後続車有人隊列」、後続車を無人化した「後続車無人隊列」と大きく3種類に分類され、段階的に実用化が目指されている。2016年度に官民一体で実証事業が始まり、後続車無人状態での隊列走行実験に成功するなど開発を進めている。