磁気マーカーで自動走行を支援する(愛知製鋼製の磁気マーカー)

 内閣府主導の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)は、羽田空港地域で自動運転バスを使った次世代交通システムの実証実験を開始したと発表した。道路側に敷設した磁石「磁気マーカー」を使って自動操舵の精度を高めるとともに、信号情報やバス専用レーンといった交通インフラの情報を活用して定時運行性の向上につなげる。自動運転の技術を公共交通の分野にも応用し、次世代型交通インフラの仕組みを確立する。

 SIP第2期「自動運転(システムとサービスの拡張)」の目玉プロジェクトである東京臨海部の大規模実証の一環として実施する。すでに開始した臨海副都心地域では主に乗用車タイプをベースに改良を加えた自動運転車を使うのに対し、今回は自動運転バスを中心とした実験で、次世代型の交通システムの確立を目指す。

 羽田空港地域の実証では、羽田空港第3ターミナルビルと同空港跡地第1ゾーンを結ぶ公道を舞台に、自動運転レベル4(特定条件下での完全自動運転)相当のバスを走らせる。車両は燃料電池バス「SORA」(ソラ)をベースとした車両など3台を用い、運転席に人が乗った状態で実施する。公道に埋め込んだ磁気マーカーを使い自動操舵やバス停への正着制御などを試す。ITS無線路側機からの信号情報やバス専用レーンによってバスが優先的に走行できる仕組みをつくり、快適な次世代型公共交通システムの実現を目指す。

 SIPは産学官の関係者が集まり、省庁や分野を超えて自動運転の協調領域に関する研究開発を推進している。2014年から始まった自動走行のプロジェクトは現在、第2期(18~22年度)の中間地点にある。

 第2期の柱プロジェクトと位置付ける東京臨海実証には国内外の自動車メーカーやサプライヤー、大学など29機関が参加する。臨海副都心地域、羽田空港地域、この2カ所を結ぶ首都高速道を実験エリアとする。東京臨海部実証は新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言を受けて一時中断していたものの、5月25日の宣言の全面解除を受けて26日から再開している。