eパワーのカットモデル

 日産自動車は、環境対応技術を電気自動車(EV)、シリーズハイブリッド技術である「eパワー」、プラグインハイブリッド車(PHV)に絞り込む。世界的に環境規制が強化され、自動車各社は対応を迫られているが、市場ごとに規制が異なるため、すべてに対応するには多額の研究開発費が必要になる。同社は環境技術で全方位の開発を取り止め、「選択と集中」を進めて開発を効率化しながら電動化対応を進める。燃料電池車(FCV)開発の凍結に加え、ストロングハイブリッド車(HV)や48㌾マイルドHVの開発を凍結・縮小する方向だ。

 同社では世界的に規制が強化される環境規制に対応するため、電動シフトを本格化する計画だが、量産モデルの研究開発ではEV、eパワー、PHVに絞り込む。

 軽自動車やSUVの新型EVを2020年から21年にかけて市場投入する。ガソリンエンジンで発電機を回してつくった電気でモーターを駆動するシリーズハイブリッドのeパワーは現在、「ノート」とミニバンの「セレナ」、タイで販売開始したSUV「キックス」に設定しているが、今後、搭載するガソリンエンジンの排気量と設定モデルを拡充する。PHVでは、グループの三菱自動車と連携して日産車にも設定する予定だ。

 日産は事業をグローバルで展開しているため、環境対応技術でも全方位で研究開発を進めてきた。しかし、ダイムラー、フォード・モーターとFCVの開発で協業してきたが18年にすでに撤退した。

 日産が独自開発してきたバイオエタノールを改質した水素を燃料とする固体酸化物(SOFC)型FCシステムの商用化やFCVの開発も凍結する。欧州で主流になると見られる48㌾マイルドHVや、日本で主流のストロングHVの開発は凍結または縮小する方針。ISG(モーター機能付き発電機)による低電圧の簡易型マイルドHVは継続する。

 同社は米国などの新車販売不振で業績が急激に悪化しており、経営再建策を28日に発表する。環境規制に対応するための研究開発投資が経営の負担になっている。

 全方位での環境対応技術を取り止めて、需要が見込める領域に集中して開発の効率化を図る。