WIESS 洪宏淵会長㊨と唐中浩マネージャー
アルテック華晶集団 夏汝文 董事長兼執行長
フェイホン 林飛宏 事業本部長㊨ 楊維絜 事業副本部長㊧
XFE 陳建綸 総経理
フクタ 張金鋒 総経理
KSターミナルズ 鄭景壬 総経理㊧ 萬芝嘉マーケティングディレクター㊨   
エヴァーフォーカス 張嘉元 資深経理㊧ 李冠■(ひとやねに米) 副理㊨
ライトン (左から)周哲毅 副総経理、安志東 総監、廖正堯 総監 

 コンピューターやスマートフォンの分野で成長を遂げた台湾企業が次の産業の要と位置づけているのが車載用部品事業だ。自動車産業が100年に一度の変革期を迎える中、台湾の各企業は、自動車の進化に対応するための先行開発を強化している。特にこれから普及が進む電気自動車(EV)は台湾メーカーにとって次世代自動車市場のサプライヤーとなるチャンスと捉えている。こうしたなか、台湾貿易センター(TAITRA)では毎年4月に自動車部品産業の見本市「台北国際自動車部品及びアクセサリー見本市(Taipei AMPA)」を開催することで各国のバイヤーから注目を集める後押しを行っている。今年は新型コロナウイルス感染防止のため、10月21日~24日に延期することを発表したが、今回は同ショーに出展を予定していた企業をはじめ注目の台湾企業の取り組みを紹介する。

◆WIESS(微馳智電) デジタルコクピット

 台湾のスタートアップ企業が自動車市場でのプレゼンスを高めている。その中の一社、WIESS(微馳智電、洪宏淵会長)は2017年に設立し、自動車および家電分野のトータルソリューションプロバイダーとしてさまざまな用途向けのコネクテッドソフトウェアソリューションの開発を目指している。株主には、フォックスコンの子会社であるフォックスコン・インターコネクトテクノロジーなどが名を連ねる。

 「当社は主にカーエレクトロニクスに関するデザイン力を持ち、車の急速なICT化に対応した革新的な技術を開発する技術者集団」(洪会長)とする。

 同社が持つ最先端技術は、デジタルコクピットと呼ぶトータルソリューションは、デジタル機器クラスター、インフォテインメント、リアシートエンターテインメント、ヘッドアップディスプレイ(HUD)システムなどで構成されている。「将来のデジタルコクピットに関する我々のビジョンは、あらゆる運転状況でドライバーニーズを予測する完璧でユーザーフレンドリーな環境の実現であり、インタラクティビティ、快適性、ドライバーと乗客に便利性を提供するオールインワン・トータルソリューションコクピット」(同)と語る。

 今年後半に生産を行う予定の製品の中には、360度のパノラマAVM+、電子ミラー、ワイヤレス充電器、BSD、二輪車用の電子制御ユニット(ECU)が含まれている。特に自動車用のワイヤレス充電器は15Wの急速充電デバイスとなり、Qi認証を受け、iPhoneやサムソンなどの主要ブランドをサポートすることが期待されている。また、自動車用にも使用されるeミラーは、高度な画像とディスプレイエンジン、ハイダイナミックレンジ(HDR)を備えており、さまざまなサイズのLCDフォームと比率に対応する。

 現在、同社の従業員のおよそ80パーセントがR&Dに従事しており、そのスタッフは、エレクトロニクス設計と製造において20年以上の経験を持つ。洪会長は「先端技術を提供するだけでなく、自動車メーカーが環境と安全の課題に対応できるように最適なソリューションを提供することでこの産業がいつまでも発展していくことを望んでいる」とする。

◆アルテック華晶集団 カメラモジュール

 アルテック華晶集団(夏汝文董事長兼執行長)は、デジタルカメラのODMを中心に事業を拡大してきたが、2005年頃から自動車業界に参入。培ってきたデジカメ技術を活用し、リアカメラやアラウンドビューカメラなどの開発を行ってきた。近年、自動車の電子パーツを取り巻く環境が急速に変化する中で、これまでの『見渡す』というビューイング機能から『検出する』というセンシング機能の向上にシフト、特にAIと組み合わせたセンシング技術開発に注力している。

 運行管理ではAIチップを搭載したカメラモジュールを運行管理会社に納入している。フロントガラス設置式の車内外を管理するAI内蔵2眼式カメラモジュールとすることで事故等の緊急時に自動通信を可能としたほか、ドライバーへの警告といったモニタリング機能も持たせることで、保有車両の拡大によりマンパワーでは補えない運行管理体制をカバーする。さらに運行管理の効率化とともに運行会社にとっては事故低減による保険料金の削減にもつながることから、市場ニーズも拡大しているとする。

 一方、自動運転の広がりとともに課題となる『運搬のラスト1マイル』を担う自動配送車のカメラモジュールの開発にも参画、北米の一部エリアですでに実証実験が行われている。

 カメラモジュール開発における同社の強みは自社開発のAIチップ。その特徴は小型・ローパワーチップ。各社がハイパワーチップを取り扱うなかで、将来のEV化拡大を見据え車載バッテリーに負荷がかからないローパワーチップの存在は大きな武器となるとする。あわせて、5Gの動向も注視している。5Gの採用拡大とあわせ、より複雑な制御技術が進む中でBtoB事業が拡大するとみている。

 夏董事長兼執行長は「車載ビジネスが拡大するなかでAIを基盤としたカメラモジュールはより重要となる。人を検知する自動空調など車内センシングでの活用に加えてバックミラーやサイドミラーのカメラ化はより高度なセンシング機能が必要だ。ティア1へのアプローチはもちろんカーメーカーに対しても存在感を示していきたい」とする。

◆フェイホン(飛宏科技) EV用充電装置

 フェイホン(飛宏科技、林中民董事長)は、電源・充電装置サプライヤーとしておよそ50年の歴史を持つ。電源・充電装置はカメラや携帯電話、電動工具など様々なカテゴリーで使用されており、同社ではこれら製品を製造する各国大手メーカーのOEM/ODMを手掛けるなど世界トップ10のサプライヤーだ。台北が本社の同社は、台南にR&Dセンターを設置するほか、中国とベトナムに計4か所の生産拠点と、北米、ヨーロッパ、日本などに営業拠点を構える。各生産拠点では多様化するグローバルニーズに対応するため、ISO9001品質管理システム認証と製品安全規格認証を取得するほか、ISO13485医療器具品質管理システム認証も取得している。

 自動車に関しては、世界的なEVの普及に合わせ充電装置などの自動車関連事業の強化を進めている。EV用充電装置ラインアップは、交流・直流ともさまざまなタイプの機器を取りそろえる。またスタンド式直流急速充電装置では60~360キロワットまで最高出力別に装置を用意するほか、充電インターフェイスは各国の基準に対応し、CHAdeMO(チャデモ)基準にも対応。生産工場ではIATF16949:2016自動車業界品質管理システムを取得するなど高品質な製品の供給に努めている。

 EV充電装置における同社の強みは、充電装置だけでなく管理システムを含むEV充電ソフトウェアソリューションの提供にある。充電スタンドの位置情報をはじめ、予約管理や充電状況のモニタリング、決済といったユーザー側の利便向上に加え、充電装置自体のモニタリングやソフトウェアのアップデートなど、充電スタンド運営側にとっても利便性が高いシステムだ。

 こうしたソフトウェアを含む充電装置ソリューションの展開について、林飛宏事業本部長は「各国の車種とのマッチング確認は非常に重要な作業でありスピード感を持って検証を行っていく。そしてグローバル市場で安全で高品質なソリューションの提供に努めたい」と語る。

◆XFE(軒帆光電科技) LEDヘッドライト

 XFE(軒帆光電科技、陳建綸総経理)はLEDヘッドライト開発のスタートアップ企業で、2015年の設立。陳総経理は同社設立以前から大手電子メーカーにおいてLEDヘッドライトにかかわる研究・開発に従事していた。同社の特徴は、LEDヘッドライトの光源や配光に関する研究・開発に特化している点。各構成部品や製造に関しては複数のパートナー企業に委託しマーケットに合った製品化を行うというビジネスモデルを展開している。

 現在、アフターマーケット向け製品としてハロゲンバルブからLEDバルブへの代替需要をターゲットに製品開発を進めている。代替における最大のポイントは、各国の規格に準拠した正しい配光の実現であり、同社の強みはまさにこの正しい配光の実現力にある。

 現状、一部のLEDバルブには配光の乱れが大きい製品が見受けられるとする中で、純正採用のハロゲンバルブ以上の正しい配光の実現に対する絶対的な自信が他製品との差別化要件ととらえている。 加えて、省電力、小型化も大きなセールスポイントだ。消費電力は一般的な製品の約半分となる12Wを実現。正確な配光により、不要な範囲の照射にかかる消費電力を抑えたことにより可能としたとする。また、ハロゲンバルブとほぼ同等のサイズを実現したほか、コントローラーも小型化し、交換のしやすさも実現している。製品化にあたり、アルミ削り出しボディを採用するなど軽量で高剛性、耐振動性能を追求したほか、車載上不可欠なEMC(電磁環境両立性)測定も実施するなど万全な体制を敷いている。

 LEDヘッドランプモジュールをはじめ、25年を目処に道路状況や天候などに対しセンシング機能を持ち合わせたスマートライティングの製品化を目指すとしている同社。当面は「世界市場の7割はまだハロゲンバルブであり、アフターマーケットでのLEDバルブへの代替需要は確実にある」(陳総経理)とシェア拡大に努める考え。一部製品は日本国内でも展開しており「自社ブランド展開のみならずOEM供給などあらゆる形でさらなる市場開拓を進めたい」(同)とする。

◆フクタ(富田電機) EV向けモーター

 フクタ(富田電機、張金鋒総経理)は、1988年の設立。産業用の汎用モーター、サーボモーターなどを中心に事業を拡大してきた。2005年には、北米の新興EVメーカーへのモーター納入を皮切りに本格的にEV向けモーター事業にも乗り出した。現在ではEVを始め、低床EVバス、電動二輪車などに規模を拡大するなど、EV関連で売り上げの約半数を占めるまでに成長、同社の事業拡大の原動力となっている。現在、台湾国内に3工場を構え、その敷地面積は8万4300平方㍍、従業員数は約300人を数える。また、取引実績では北米やカナダ、インド、日本など産業用、EV用を合わせ34カ国に上る。

 15年を経過したEV事業について、同社ではまだ新しいマーケットと見ており、サプライヤー企業との間でメーカーが求めるスペックや品質について十分な検討・評価・検証が出来ることが重要と捉えている。こうした中で、強みである高い技術力と研究開発(R&D)力、そしてフレキシブルな生産体制と品質管理力を備えた『モーター設計から制御まで一貫生産』を武器に、ニーズを捉えた供給拡大を進めたい考えだ。

 同社の持つ技術力で特筆すべきは10年以上の開発、製造経験を持つ鋳造純銅ローターだ。電気伝導性に優れた純銅で製造することにより高効率化を実現するとともに、温度上昇が抑えられることで絶縁システムの長寿命化がもたらされた。また、高効率化によりアルミ製ローターに比べ小型化が図れるとともに全体コストの削減もにもつながるとする。こうした高い技術力を基盤としたR&Dでは、基本となるコアや巻線といったモーター特性の設計から、ギアボックス、ローター設計、そしてインバーターアプリケーションなどの電子制御までの一貫体制を構築している。

 EV市場の拡大によるモーター需要の増加を見込んだ設備投資を拡大する同社。張総経理は「自動車メーカーがEⅤ生産にシフトするなかで、いかにメーカーの考えに沿った開発・生産ができるかがカギとなる」とし、『高効率・高品質・低価格』をキーワードにさらなる事業拡大を進めたい考えだ。

◆KSターミナルズ(健和興端子) EV充電用コネクター

 KSターミナルズ(健和興端子、鄭景壬総経理)は、1973年に設立。新エネルギー、EV、鉄道輸送、通信ネットワークなど多くの産業分野で使われる端子、コネクター製品の製造を行う。設立当初は端子のOEM事業からスタート。品質を第一とした誠実な事業への取り組みで、端子とコネクター市場で実績を築いてきた。2018年には本社隣地にR&Dセンターを設置。一階にあるショールームには、産業分野別にさまざまな端子やコネクターが展示され、設立からの発展の一端をうかがい知ることができる。

 生産は台湾にある2カ所の工場のほか、中国、タイ、インドネシア、ベトナムに営業所を設置。鄭総経理は「現在1万5千種以上の製品をグローバルに提供する中で、ISO9001、ISO14001、IATF16949などの国際認証に合格し、各シリーズ製品の異なる品質保証と各国安全規定認証にも合格している」と話す。

 「世界の顧客に満足のいくサービスを提供するために、私たちは厳格な品質管理はもとより研究開発リソースに投資を続け、革新的な製品とプロセス技術を開発し新エネルギー、EV、鉄道輸送、ネットワーク通信などの産業用途向けに端子とコネクター製品を積極的に拡大している」(同)という。

 自動車用コネクターは小型防水コネクター、ECUコネクターなど各種製品を取りそろえているが「自動車関連は極めて保守的な業界。ただ、EV分野は新しい分野であり取り組みやすい」とし、欧米そして中国規格の交流式充電コネクターのラインアップを充実。台湾ではE―スクーター用のDC充電コネクターも揃えている。また、ハーネス製品では、ティア1への販売のほか、コネクターの製造装置も販売する。

 「短期的な利益よりも長期的な安定成長を続けソリューションとモジュール製品で精密コネクター企業として世界的な企業のパートナーになる」(同)とする。

◆エヴァーフォーカス(慧友電子) 車両監視システム

 エヴァーフォーカス(慧友電子)は、カメラおよび録画システム(DVR)を活用したセキュリティー機器の総合メーカーとして、欧米を中心に高いシェアを持つ。車両監視システムでは、これまでトラックやバス用のモバイルDVRの提供の実績がある。今後はこれまでのシステムからさらに進んだ次世代の車両監視・管理システムの構築に注力していく。

 運行車両の管理は運送事業者にとって資産保護や機会損失の低減、リスクの低減など多岐にわたる重要な要素を含んでいる。こうした中で同社のシステムはカメラとモバイルDVRを組み合わせたシステムとして運行管理にかかわる問題点解決策を提案する。

 車載用に開発されたFHDカメラとモバイルDVRを設置することで、多くの車両情報車両情報管理を可能とした。システムの構築は各運送事業者をはじめ運行管理会社、システムメーカーとの共同開発により、ニーズに合ったシステム構築を可能とする。これまでの実績として、国内外のトラック、バス事業者に採用が進んでいる。

 次世代型のAIスマート監視産業用コンピューターは、第7世代のインテル社製プロフェッサを内蔵し、モバイルネットワークビデオレコーダー(NVR)として機能するよう設計されており、4Gリモートモニタリングを介して車両監視を行うことを可能とした。スマート監視システムは車両に設置することで、車両自体や搭載機器の盗難を防止するための監視機能のほか、複数車両のリアルタイムでの監視映像と交通および道路情報を融合することが可能で、管理機能の向上に大きな役割を果たす。また、インテル社製のAIコアモジュールにより人物や車両の行動予測検出も可能としている。また、プラットフォームはインテル社製だけではなくNVIDIA社製にも対応しており、同社内ではそれぞれのプロジェクトチームにより開発を行っている。張嘉元資深経理は「インテル社、NVIDIA社と共同で新たなソリューション作りを進めており、各国のユーザーニーズに合ったシステムを開発していく」と今後の展開を述べる。

◆ライトン(光寶科技) 車載用電子部品

 ライトン(光寶科技、宋恭源董事長)は、オプティカルコンポーネント、電源、モジュール・IoT事業、ODM事業をグローバルに展開するなかで車載事業拡大に向けアクセルを踏む。

 2019年グループ全体での売上げは1780億台湾ドル。全世界に334カ所の製造、物流、営業拠点を持つ。

 同社の車載用エレクトロニクス応用事業(AEA)は1979年に始まり、以来、この分野に向けた多彩な製品を開発してきた。昨年7月には、AEA事業を自動車用灯具ソリューション、車載ビジョンソリューション、車載制御アプリケーションの3部門に集約しグローバル需要に対応している。

 車載ソリューションの提供に特化する同社は、ティア1との取引に重点を置くとともに、CASE分野のトレンドに対応。「コネクテッドでは、テレマティクスボックスと故障診断システム(OBD)ドングルを提供。C-V2XおよびDSRCソリューションを開発中」と車輛控制興応用事業處の安志東総監は述べる。ADASと自動運転分野については最先端のヘッドアップディスプレイ(HUD)、車両用灯具、カメラ、レーダーがあり「LiDARを製品化するスタートアップの受託生産も開始予定」(同)とする。シェア&サービスではADAS向け先端テレマティクスボックスを提供しており、近くリモートコントロール付きOBDも提供予定とするほか、モーターコントロール、車載チャージャー、EVチャージャーなども揃えている。また、レーダーやセンサーとともに同社が開発に注力する製品が高精度車外カメラおよび車室内カメラ。車載カメラ市場においては今後500~800万画素まで上がる事も想定している。

 ライトンは18年以上にわたり車両用灯具ビジネスに携わっている。PCBA基板上にLEDを正確に搭載する技術は同社の強みの一つだ。

 ライトングループは、約3300人のエンジニアが研究・開発に携わり売り上げのおよそ3%がR&Dに費やされている。「AEAに関しては更に高いパーセンテージをR&Dに割り当て、ティア1の要求に合わせて個々の製品ラインを拡充することが可能になっている」(同)とする。