トヨタ自動車は3月3日、4月1日付けで副社長職をなくして「執行役員」に集約するなどの組織改正と役員人事を発表した。経営幹部の階層を減らして、経営判断のスピードアップを図るとともに、次世代の経営幹部を育成する。同日付けでの役員人事では、販売を担当するディディエ・ルロワ副社長が取締役は継続するものの、執行役員を退任し、開発担当だった吉田守孝副社長は退任する。

同社は2011年1月に取締役を27人から11人に削減するとともに、役員の意思決定階層の削減した。その後も、取締役が経営の意思決定と監督、執行役員が業務執行という位置づけの明確化、2019年1月には専務役員以上を「役員」、常務役員、常務理事、基幹職1級・2級、技範級を「幹部職」にそれぞれ設定するなど、階層の削減を進めてきた。

今回、副社長を廃止し、業務を執行する役員を「執行役員」に一本化する。階層を減らすことで、意思決定を迅速化するとともに、次世代の経営幹部と、経営トップが直接対話する機会を増やして意思疎通を図り、経営を効率化する。

執行役員は全員同格となる。チーフオフィサー、カンパニープレジデント、地域CEO、各機能担当に分けてそれぞれの役割を明確化するが、役割は固定せず、状況に応じて適任者を配置する。自動運転や電動化などによって自動車業界が急激に変化する中、迅速、柔軟に対応するため、フレキシブルな経営体制とする。トヨタの豊田章男社長は「今回の体制変更はさらに階層を減らすことによって、私自身が次世代のリーダーたちと直接会話し、一緒に悩む時間を増やすべきと判断した。次世代のために、やらなければならないことは何よりも『トヨタらしさ』を取り戻すこと」とコメントしている。

豊田社長が2009年にトヨタの社長に就任してから10年以上が経過した。豊田社長は「『トヨタらしさ』を取り戻す。それをしなければ次世代にタスキをつなぐことはできない」としており、今回の役員体制の変更で、次世代の経営層の育成に本腰を入れると見られる。

一方、現在の副社長の役員人事では、河合満氏は兼任していた総務・人事担当を外れて、ものづくりを担当する。小林耕士氏は兼任していたファイナンス部門を外れてリスク担当、寺師茂樹氏が兼任していた技術担当を外れて経営企画、友山茂樹氏は現在の担当に加えて、生産も担当する。

また、近健太経理本部長がファイナンス、パワートレーンカンパニーの前田昌彦プレジデントが開発をそれぞれ担当する。