SIPは約100台の自動運転車を使い、技術面と社会的受容性の向上を狙う

 2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会は、日本が自動運転技術を国内外に向けて発信するショーケースとなりそうだ。政府・未来投資会議で、安倍晋三首相の「20年オリンピック・パラリンピックで自動運転を実現する」との発言を受け、官民連携の取り組みが加速する。内閣府が主導する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)は、全国での実証を通じて技術・法整備・受容性醸成の壁の克服を狙う。

 自動運転の実用化には、技術開発と法整備の両輪で進めていくことが欠かせない。関係府省庁や産業界、大学が一堂に会するSIPは、両者を一体的に進める枠組みとして機能する。19年の通常国会では、道路運送車両法と道路交通法の改正案が成立し、20年には一定レベルの自動運転車が公道を走行できる環境が整う。

 技術面での取り組みも進む。SIPは、19年秋から東京臨海部で、公道を使った大規模な自動運転の実証実験を始めた。国内外の自動車・部品メーカーや大学など、28機関が実験に参画する。20年度末にわたり、計約100台の自動運転車を投入して、自動運転の実現に必要な技術的なノウハウや実験データを集める。

 実証の舞台となるのは、台場周辺の臨海副都心地域や羽田空港地域、羽田空港と臨海副都心を結ぶ首都高速道路だ。無線通信によって車に対して信号情報を提供することや、路側センサーから高速道路の本線の情報を送り、安全な合流を支援すること、自動運転バスに必要な磁気マーカーなどの有効性を確認する。

 SIPは、同実験の実施に当たって、臨海副都心地域や羽田空港地域で、高精度3次元地図情報やITS無線路側機による信号灯火色情報などを提供する環境を整える。先行して、臨海副都心地域で信号情報の実証実験がスタートし、羽田空港や首都高速道路についても交通インフラが整い次第、20年春から実験が本格始動する予定。

 現時点で、一般の車が多く行き交う交通状況のなかで、車側に取り付けたセンサーだけで自動運転をすることは難しい。自動運転車が安全に走れるようにインフラからの車に情報を送り運転を支援。信号情報や高速道路の合流支援情報などを活用し、インフラ協調型自動運転の可能性を探る。

 東京オリンピック・パラリンピックをショーケースに、SIPと日本自動車工業会が連携した社会受容性への取り組みも行う計画だ。この大規模実証をきっかけに、20年7月に、自動運転車約100台を使った試乗体験会を開く。大規模実証を通じて、自動運転の実用化に向けた、技術開発・規制改革・社会的受容性の醸成が一気に加速しそうだ。