赤羽一嘉国土交通相は新春にあたり日刊自動車新聞などの取材に応じた。自動運転やMaaS(サービスとしてのモビリティ)、物流など2020年の自動車行政の展望を聞いた。

 ―MaaS導入の狙いは

 「過疎地域の高齢者の移動手段として有効だ。高齢運転者による自動車事故の増加に伴い、運転免許を返納する動きが増えている。返納後の移動手段の受け皿として公共交通機関があるが、利用者全てのニーズに応えることは難しい。公共交通がないから無理して車に乗っているという地域が多い。公共交通の空白地を補完するという意味でMaaSへの期待は大きい」

 ―普及に向けた取り組みは

 「現在、全国19カ所で実証実験が行われており、将来的に本格導入することを前提に進めている。地方の公共交通事業者のキャッシュレス化や交通情報のデータ化など、単独ではなかなか対応しきれないことを国交省が応援する」

 ―自動車技術の進展に伴う、国交省の対応は

 「新たに、緊急自動ブレーキの乗用車への搭載義務化を決めた。21年11月以降の国産新型車から段階的に装備を義務付ける。高齢者の自動車事故のもとはやっぱり、自動車の操作ミス。それを補うための緊急自動ブレーキやペダル踏み間違い時加速抑制装置など、自動走行を見据えた技術開発の促進策を進める」

 ―自動運転に対する大臣の考えは

 「自動走行は非常に大切だが、過信しないことも大事だ。19年11月に交通事故被害者遺族の会『あいの会』の皆さんの話を直接聞いて、共通していたのは『自動走行だから事故は起きない』はありえないということ。安全神話に陥らないよう、自動走行を進める上での大前提として過信対策も講じる」

 ―事故被害者の救済事業の方針は

 「事故被害を受けて後遺症に悩まれている方の療護施設は全国で11カ所ある。介護する親の高齢化により、自分がいなくなった後どうするのかといった切実な問題があり、療護施設を適正に拡充する。自動車安全特別会計から国の一般会計に繰り入れられたままになっていることを踏まえ、しっかり返済してもらえるようメニューをつくりたい」

 ―物流政策は

 「物流は経済成長と国民生活を支える重要なライフラインだが、近年は労働力不足や災害対応、運賃の適正化などさまざまな問題がある。こうしたことをしっかりとクリアしないと持続的な物流を実現できない」

 「〝強い物流〟と称して今、物流政策の大綱の見直しを進めている。具体的には、物流総合効率化法に基づいて、優良な事例を認定し、予算や税制で支援している。これまでできなかった複数の交通モードにまたがる貨客混載や異業種が連携した共同モーダルシフトなど、この3年間で186件の取り組みを認定した」

 ―物流部門の生産性向上に向けた取り組みは

 「統計によると、物流事業の労働生産性を20年までに2割程度向上させるという目標に対し、17年度までに13・1%向上した。今年はラストスパートをかける。荷主もわがこととして捉えて取り組んでもらう必要がある。人手不足が深刻化する中、物流が立ち行かなくなると荷主の経済成長もありえない。経済全体を良くしていくためには物流の生産性は必要不可欠だという思いで取り組みを進める」