旭化成の吉野博士

旭化成の名誉フェローである吉野彰博士が、リチウムイオン電池に関する研究究開発の功績で、2019年度ノーベル化学賞を授与されることが決定した。日本人ノーベル賞受賞は2018年の京都大学の本庶佑特別教授に続いて27人目で、ノーベル化学賞の日本人受賞者としては8人目。米国テキサス大学のジョン・グッドイナフ教授、米国ニューヨーク州立大学のスタンリー・ウィッティンガム特別教授との共同受賞となった。

リチウムイオン電池は市場の急拡大が見込まれている電気自動車やプラグインハイブリッド車など、環境対応の次世代自動車に必要可決な製品で、産業分野に与えている影響が大きいことが評価された。

吉野博士は、電池の負極材料として「ポリアセチレン」という電気を通すことのできるプラスチックを発見。これを米テキサス大のグッドイナフ教授と東芝リサーチ・コンサルティングの水島公一博士によって1979年に発見されていた正極材料コバルト酸リチウムと組み合わせることによって新型二次電池の原型を築いた。

また、正極の集電体にアルミニウムを使用するというリチウムイオン電池の基本技術開発と、実用化のために必要な電極化技術、電池化技術、周辺技術をそれぞれ開発、小型・軽量の新型二次電池としてのリチウムイオン二次電池の実用化を達成した。

吉野博士は「環境問題に答えを出してくるということにストックホルム(スウェーデン王立科学アカデミー)の方が期待され、リチウムイオン電池が(ノーベル賞の)対象になったことに嬉しく思うし、いろいろな分野での若い研究者の励みになってくれる」と、今後の研究開発の発展に期待感を示した。

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、高エネルギー密度化と安全性の両立が可能な蓄電池である全固体リチウムイオン電池を世界に先駆けて実用化するための研究開発プロジェクトを推進している。吉野博士はプロジェクトの委託先である技術研究組合リチウムイオン電池材料評価研究センターの理事長としてプロジェクトを推進している。