新しいロゴ。平面的でシンプルなデザインにする
旧ロゴ。立体感が特徴だが、使用にあたっては細かなルールが存在していた
ロゴの使用例。背景にとらわれず、使用できるのが特徴。広告で最も効果的な位置にロゴを使用できるようになる
ディーラーでの使用イメージ
VWブランドの全車両に使用されていく
同時発表した新型EVの「ID.3」

 独フォルクスワーゲン(VW)は、ドイツで22日まで開催されている「フランクフルトモーターショー(IAA)2019」で、新しいロゴを発表した。同時発表した電気自動車(EV)の新型「ID.3」とともに、新たなロゴは「VWの新しい時代の始まりを示す」(セールス・マーケティングおよびアフターセールス担当取締役のユルゲン・シュタックマン氏)もの。ID.3を皮切りにEV投入を加速していく中、ロゴのデザインも刷新し、ブランドを再構築する。

 ブランドにとって最も重要なシンボルでもあるロゴのデザインを見直した。2012年から使用してきた従来のロゴは、「VW」の部分が立体的になって強調されていた。これに対して、新しいロゴはシンプルで平面的な印象を持たせる。「クリアで無駄のないデザイン」(同社)にしたという。「W」の下の部分が、VWを取り囲んでいる円から浮いているというのも特徴だろう。

 新しいロゴは、マークの背景に使用する色が自由に選べるようになった。これまでのロゴでは、背景との差別化のためにロゴの周囲にわずかな白いスペースを設けたり、写真の上に重ねるといったことができなかった。だが、新しいロゴでは、細かな使用ルールがなくなるため、デジタル広告などで最も効果的な位置にロゴを配置できるようになった。ロゴのデザインは、こういった宣伝やマーケティング面も考慮し、シンプルさを追求したとしている。

 新ロゴは、ID.3のようなEV専用プラットフォーム「MEB」を採用した車両に限らず、全車両に適用する。乗用車部門だけではなく、商用車部門でも採用する。

 世界各地にある拠点やディーラーで掲げているブランドのロゴも変更する。欧州の拠点から切り替えを始めて、年内には中国でも変更する。独ウォルフスブルクにある本社工場のビルは、既に交換済みという。

 20年初めからは、北米や南米などの地域でも切り替えを段階的に行う。20年半ばまでに、日本を含む171の市場と地域でのロゴの変更が完了する予定だ。ただ、変更による費用負担を抑えるため、ディーラーでのロゴの変更は外観を中心に行う。約1万を数えるディーラー、サービスパートナーの施設で約7万のロゴが変更されることとなる。

 VWは15年9月にディーゼルエンジン(DE)の排ガス不正が発覚。DEへのイメージやVWブランドもダメージを受ける中、世界各国での環境規制強化の影響も受けて、EVに軸足を移す戦略を発表している。

 この戦略を加速する車両が、今回のIAA2019で発表したID.3。VWは、EVを効率的につくるため、専用車台のMEBをグループで活用しコストメリットを追求していく方針で、ID.3はMEB採用車の第一弾となる。

 バッテリー容量は3種類から選択でき、最も安いタイプの航続距離はWLTCモードで最大330㌔㍍。20年半ばからドイツで販売を開始する予定で、価格は3万 ユーロ (約350万円)未満とした。VWブランドは、今後10年間で1千万台以上のEVを生産し、20種類以上のEVを投入することを明らかにしている。

 VWはEVを「新しい時代を主導するテクノロジー」と位置付けており、ID.3の後にも投入していくID.ファミリーによって「最も持続可能な量産自動車ブランドになる」(同社)としている。

 同社はIAA2019で、電動化に加えてコネクテッド機能の搭載、製造工程などライフサイクル全体での二酸化炭素排出量の削減をキーワードにスローガン「ニュー・フォルクスワーゲン」も打ち出した。新しいロゴは、この〝新しいフォルクスワーゲン〟の幕開けを象徴するものとなる。

(林 里奈)