22年のイベントでも発売を望む声が多かったID.バズ

 フォルクスワーゲン(VW)車の2024年の国内販売台数が、30年ぶりに3万台を割り込んだ。フォルクスワーゲングループジャパン(VGJ、マティアス・シェーパース社長、愛知県豊橋市)は昨秋、年2万5千~2万7千台と見立てており3万台割れは既定路線だったが、実際は2万3千台を切る水準にとどまった。中東情勢などによる海上輸送の遅延を理由にしてきたが、ここにきて日本仕様車のソフトウエアに加え、電装系の機能調整や点検が要因の一つにもなっていることも明らかになってきた。ただ、メーカーを含め課題解決を急いでおり、25年の巻き返しを目指している。

 日本自動車輸入組合(JAIA、ゲルティンガー剛理事長)によると、VWの乗用車の新規登録台数は24年、前年比28・4%減の2万2778台となり、6年連続の前年割れだった。3万台を切るのは1994年以来で、3割近い減少幅もここ10年で最大。24年7月以降、前年同月比で3~6割のマイナスが続くなど落ち込みが目立っていた。

 この理由について、VGJの首脳は海上輸送の混乱が長引いていることを挙げている。さらに、同社の関係者によると、日本仕様への変更が必要なソフトや電装系の調整に時間がかかり、ドイツで車両が留め置かれているとしている。別の関係者も同様の理由を挙げ、「もうすぐ日本に入る、入ると言っていつも来ない」とこれまでの状況を明かす。

 VGJのVW部門のブランドディレクターであるイモー・ブッシュマン氏は、10日に開いた「東京オートサロン2025」のプレスカンファレンス後に、「車のデジタル化が急速に進み、車に搭載するコネクティビティーの要素が増えている」とした上で、「経営陣を挙げて(その)問題の解決に取り組んでいる」とし、デジタル関連の問題を抱えていることは認めた。

 しかし、「そのことで日本への供給が遅れていることはない」とし、海上輸送の遅れや、愛知県豊橋市にあるVGJの納車前整備(PDI)工場で日本仕様への変更作業に時間がかかっていると強調した。メーカーがドイツで行っているリストラ策についても「影響は全くない」とした。ただ、同社は24年7月、国内に新モデル4車種を導入すると公表したが、納車などはずれ込んでいるとみられる。影響がさまざまな車種や要因に及んだことで、日本への新車の供給にも想定以上に響いた可能性が高そうだ。

 ブッシュマン氏は国内市場において、「25年はVW復活の年になる」としている。東京オートサロンでも、国内の「ID.」シリーズで第2弾となる「ID.バズ」の発売時期を「今夏」にする方針も明らかにしており、昨夏に公表した新モデルも本格的に日本に入ってきそうだ。さらに、プラグインハイブリッド車(PHV)や内燃機関車のモデルも充実する計画も打ち出す。まずは「25年は前年を上回りたい」との目標を掲げるが、その先のシェア挽回を見据えた基盤強化も視野に入っているとみられる。

(編集委員・小山田 研慈)