ヤマハ発動機とソニーが開発したエンタメ車両

ヤマハ発動機とソニーは8月21日、車内でエンターテインメントを提供する自動走行車両を共同開発したと発表した。カメラで撮影した走行中の車両周囲の映像に、様々な画像や映像を重ねたミックスド・リアリティ(MR、融合現実感)を車内で楽しめるのが特徴。観光地なら、城などの名所の走行に合わせて歴史を解説したり、植物園で草花を説明する画像を重ねられる。ソニーでは、エンタテインメント事業で培った独自ノウハウを活用して、周囲の環境に合わせたさまざまなアトラクションを提供していく。一般には販売しないが、2019年度から国内でサービスを開始する。

共同開発車の「SC-1」には、高精細な4K大型液晶モニターを、車両外周に1台づつと、車室内に1台をそれぞれ搭載する。車両には窓がなく、車外の様子はカメラ映像がモニターに映し出される。人の視覚より優れたソニーのイメージセンサーによって映し出す映像全てにピントを合わせた状態になるため、遠方のモノであれば人間が直接見るよりもはっきりと見ることができるという。夜間でもライトを照射しなくても視認できるとしている。

ソニーの監視カメラで使っているイメージセンサーを搭載したカメラを車外の各方向に1基づつ装備する。カメラは車内に映像を映し出したり、MR用途、走行中の障害物を認識するためにも活用する。また、自動車用途をターゲットに新開発したイメージセンサーを用いたカメラを車両前後の足元付近に搭載しており、自動走行での死角を低減している。

MRはカメラ映像と、どのような物体かを認識する二次元LiDAR(レーザースキャナー)で得た情報を組み合わせることで、乗員が楽しめる映像を創出する仕組みだ。

また、車両外に搭載したモニターは、センサーで取得した車両周囲のデータを人工知能(AI)で解析する。近くにいる人の年齢や性別などの属性に適した広告などを配信することを想定する。

車両は、ヤマハ発の電磁誘導線に沿って自動走行するゴルフカートをベースとしている。

両社は昨年に共同開発契約を締結した。モニターやカメラなどをゴルフカートに搭載すると大幅に車重が増える。ヤマハ発が乗員が快適に過ごせるよう、足回りや車内空間を改善する。ソニーは2016年から同様の車両のプロトタイプを製作しており、ヤマハ発はゴルフカートを提供していたが、今回本格的に共同開発に乗り出すことにした。

ソニーは2018年2月、沖縄県のカヌチャベイリゾートのゴルフ場で、コンセプトカーを用いて期間限定の有料サービスを実施した。カヌチャの自然や動物の生態を車両で走行しながら感じてもらうというもの。アトラクションの一つとして、車両が猿に襲わる映像をMRで映し出したところ、臨場感があり、好評だったという。

ソニーは今後、ショッピングセンターやアミューズメントパーク、リゾート施設などの私有地をルート走行するサービスとして提供する予定。