E/EアーキテクチャーではセントラルECU方式ではなくゾーン制御が有力視される(イメージ)

 サプライヤーの間で、電気/電子プラットフォーム(E/Eアーキテクチャー)の変化を見据えた取り組みが広がっている。電子制御ユニット(ECU)を領域ごとに統合する「ゾーンアーキテクチャー」が次世代車で広がるとの判断が背景にあるためだ。「世界最大のゾーン制御ユニットサプライヤー」になるとかねて掲げるマレリをはじめ、独ロバート・ボッシュや独コンチネンタルの自動車部品部門が独立した新会社「AUMOVIO(オーモヴィオ)」なども取り組みを進めている。通信や半導体関連企業でも、これらを支援する動きが広がっている。

 E/Eアーキテクチャーでは、かつてはセントラルコンピューターに集約する制御が一般的だったが、サイバーセキュリティーなどのリスクや、制御の複雑化で車内通信ネットワークの対応などが課題となり、リードタイムが長くなることも想定される。

 こうした中、国内外の自動車メーカーの間では、特にソフトウエア・デファインド・ビークル(SDV)を想定した次世代電気自動車(EV)などで、ゾーンアーキテクチャーが有力視されている。パワートレインやシャシーといった機能軸ではなく、車両の「前方右」「前方左」といったエリアごとに統合する考え方だ。2034年までに新車の約4割がゾーンアーキテクチャーになるとの予測もある。

 経営再建中のマレリは、独インフィニオンテクノロジーズとともに、ゾーン制御ユニット「Zones」を開発し、昨年中国で披露した。照明やシャシー制御、熱管理、車両診断などの機能を1ユニットで管理するクロス・ドメインで、「ゾーンアーキテクチャーの中で、ハードとソフトを分離し、互換性、柔軟性、スケーラビリティーを実現する」と訴求する。

 マレリはゾーンアーキテクチャーで世界最大規模のサプライヤーになることを目指しており、年内には中国メーカー、来年には欧州メーカー向けに供給する見込みだ。

 マレリのシステムでは、例えば「プロゾーン」と呼ぶゾーン制御ユニットは、最大で3つのドメイン(熱管理・車体制御・駆動力)を統合制御できる。車両の高機能化に伴い、ECUの増加が課題になっているが、同ユニットによりワイヤーハーネス(組み電線)の複雑な配線を避けるなど、重量・コストの低減や、システムの簡素化を実現できるという。

 関連業界でも動きが広がっている。米オンセミは、ゾーンアーキテクチャーが次世代車で広がると判断し、車載イーサネット規格の採用を支援する。蘭NXPセミコンダクターズも、ゾーン制御向けの集約型ビークル・アーキテクチャーの共同開発を発表したほか、ロームもゾーン制御向けのハイサイドスイッチを製品化した。

 ゾーンアーキテクチャーではマレリのように、ボディーやコックピット、照明、パワートレインといった複数の領域にまたがる知見や機能安全、リアルタイム性、さらに半導体業界との連携などで日本勢にも強みがあるとみられる。今後は、特に世界最大のEV市場でゾーンアーキテクチャー採用が急速に広がることが予想される中国での取り組みなどがカギを握りそうだ。