日本特殊陶業は、デンソーの点火プラグと排気センサー(酸素センサー、空燃比センサー)事業を譲り受けると2日までに発表した。譲受価格は1806億円。国内外の競争法当局による認可取得が条件で、事業譲受実行日は未定。日特の自動車用プラグの世界シェアは6割に達するとみられる。足元では電気自動車(EV)シフトが減速する一方、内燃機関を持つハイブリッド車(HV)の需要が高まっている。将来的に内燃機関市場の縮小が見込まれるが、日特は〝逆張り戦略〟による事業拡大で補修需要を含めた残存者利益の最大化を目指す。
両社は2023年7月に事業譲渡の検討を始める基本合意書を締結し、これまで協議を重ねてきた。譲受対象はデンソーと子会社が手掛ける点火プラグと排気センサーに関する国内外の開発・製造、販売事業となる。役員や従業員、土地、建物は対象外。事業を譲り受けるための資金は、自己資金と有利子負債で賄う。
日特が事業買収を決めたのは当面、内燃機関向け製品の需要が一定数、確保できると判断したためだ。自動車用点火プラグは世界で10社程度が手掛けるが、リーンバーン(希薄燃焼)などエンジン技術の進化に対処できる開発力を持つのは日特、デンソー、独ボッシュとされる。足元でEV需要が減退する一方、HVやプラグインハイブリッド車(PHV)市場はグローバルで拡大。内燃機関車の脱炭素化に有効なカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)燃料の開発も進む。同社は「コア技術であるセラミックの開発と製造技術を生かし、内燃機関製品の供給責任を果たすことでカーボンニュートラルの過程に貢献する」とコメントした。
一方で、日特は2040年にエンジン関連事業と非エンジン関連事業の売上比率を現在の8対2から4対6にする計画を持つ。点火プラグ事業の強化で残存者利益を最大限に享受して経営基盤を整えつつ、新規事業の創出を含めた事業ポートフォリオの転換を同時に進める方針だ。
デンソーは事業譲渡により、電動化関連製品やソフトウエア領域、水素など経営資源を集中させる。22年1月には燃料ポンプ事業も愛三工業へ譲渡している。