―スズキとして初の量産型EVとなる
「良くも悪くもスズキはEVの『最後発』なので、他車をベンチマークして(性能を)確認した。EVは内燃機関車に比べて歴史が浅く、発展途上だ。不便なところやマイナス面など、顧客の意見を聞き、ネガティブに感じられないような車にしよう、というのが(開発の)一番のポイントだ」
―欧州市場に照準を当てて開発したのか
「スズキは日本・インド・欧州が主力市場だ。このうち、欧州では、環境、電動化を重視しなければ生き残れないので新型車のメインターゲットは欧州に置いた。欧州向けをベースにインドや日本など、地域ごとの仕様にして投入していくという手法で展開する」
―ビターラの車名を使う理由は
「ビターラは日本では『エスクード』の車名で販売しているが、日本以外の特に欧州ではビターラという車名で長年販売してきた。欧州でスズキと言えばSUV=ビターラという印象がある。スズキはニッチなブランドだが、さらに(市場がニッチな)EVとなると、イメージを重視しないといけないため、ビターラのイメージを最大限使おうということになった」
―リン酸鉄リチウムイオン電池(LFP電池)を搭載する
「一番は安全性を考慮したためで、燃えにくいからだ。加えて、コストも重要なポイントだ。三元系(ニッケル・コバルト・マンガン)のリチウムイオン電池と比べてエネルギー密度は劣っているのは事実だが(性能は)良くなってきている。安全性を優先して今回は採用した」
―コスト面での工夫は
「正直、EVのコストは高い。スズキとしては、いかにコストダウンして購入しやすくし、ショッピングリストに載せてもらえるようにしていくか、常に試行錯誤していかないといけない。eビターラでもやってきたが、まだまだというところだ。eビターラでは二輪駆動(2WD)と四輪駆動(4WD)で展開する。日本は北海道から沖縄までさまざまな地域があり、2~3割は4WDの需要がある。『何としても』という思いで、頑張って開発した。顧客にも楽しんでもらえる自信がある」
―国内ではエスクードの4WD比率が高いが、eビターラは
「国内では2WDの方が多くなると予想している。欧州も同様だ。日本ではガソリン車の比率が(2WD対4WDで)8対2や7対3ぐらいだ。新型EVは降雪地帯や悪路走行だけではなく、普段使いできる4WDに仕上げたので、4WDの構成比を上げていきたい」
―日本のEV市場の成長は
「欧州と比べて進んでいない。ただ、自動車メーカーが(EVを)アピールできていない部分もある。顧客の目を引くことがなかなか難しい状況なのだと感じる。EVだからこその良いところはたくさんある。乗ってもらえると分かるが、加速感などは楽しい。充電インフラの問題などはあるものの、楽しいクルマということをアピールしていきたい。そうすればEV市場も広がっていくのではないか」
(藤原 稔里)



