ルネサスエレクトロニクスが発表した2025年1~6月期連結業績(国際会計基準、IFRS)は、出資していたウルフスピードの経営破たんや、参入を計画していたSiC(炭化ケイ素)パワー半導体の事業化の中止に伴う減損処理などの影響で当期損益が1753億円の赤字に転落した。

 中間期で赤字となったのは6年ぶり。7~9月期は日米貿易交渉で合意した関税引き下げの影響が不透明なことから「リスクを織り込んだ」(柴田英利社長兼CEO)としている。

 売上高は前年同期比10.7%減の6343億円と落ち込んだ。前期に中国で車載向けが急増した反動もあって自動車向け事業が低迷した。営業利益は減収や為替差損の影響もあり同58.4%減の613億円と大幅減益となった。

 ルネサスは債権を保有する電気自動車(EV)向け電子部材などを手掛けるウルフスピードが米連邦破産法11条(チャプター11)を申請して経営破たんし、再建支援契約を結んだことに伴って2350億円の損失を計上した。また、SiCパワー半導体を開発してきたが、中国系半導体メーカーとの競争激化やEV普及の遅れなどを理由に開発を中止。設備を含めてSiCパワー半導体の生産を準備してきたことから減損損失を計上した。

 4~6月期(非GAAP)の自動車向け事業の営業利益率は23.4%となり、前期比6.3㌽低下した。SiCなどの一時的な要因を除いた自動車向け事業は「ほぼフラット」としている。

 今後の見通しでは、米国の関税政策に伴う不確実性を織り込み、7~10月期(非GAAP)の営業利益率が27.5%と、前年同期と比べて3.1㌽の低下を予想する。

 自動車向け事業は「28㌨㍍級のマイコンや先進運転支援システム向けの新しいSoC(システム・オン・チップ)の需要増加を期待する」(柴田社長)という。ただ、中国の反動減や欧州向けの需要低迷が続き収益の押し下げ要因となることから、自動車向け事業全体では「微増」と予想する。