アルティアの「イージームーバー」
エーミング機器のデモンストレーションは来場者の注目を集めた(オーテル)

 車両技術の高度化が加速する中、自動車整備にも高い技術が求められている。一方、慢性的な整備士不足など課題が多い。こうした事情を踏まえ、最近の整備機器やツール類は新技術への対応がいち早く進んでいるとともに、時間がかかっていた作業を効率的に行えるような機能を備えたものの開発が目立つ。「第38回オートサービスショー2025」でも、これからの整備事業者のニーズに対応した工夫を採り入れた機器の出展が多かった。

 先進運転支援システム(ADAS)の普及などで、電子制御装置のエーミング(機能調整)を行う整備機器の重要度が増している。その中でも、車輪の位置が正常か確認するホイールアライメントテスターを組み合わせるなど、必要な機能を1台でカバーできる製品が目立った。エーミングの前に行うセンサー類の距離測定なども機械で行えるため、整備の現場での省力化につながる。

 イヤサカ(今井祥隆社長、東京都文京区)が展示した米ハンター社の「アルティメットADAS」(参考出品)は、四輪アライメントとエーミングを1台で行える。また、エーミング前に行う寸法の計測を不要としたことが特徴で、容易な作業を可能にした。

 時間がかかる寸法計測を容易にするものは多い。アムテックス(千田健二社長、埼玉県所沢市)は、ジョンビーンブランドのエーミング機器を参考出品。タイヤに取り付けた反射板で距離を読み取ることで、寸法計測に必要なターゲットの位置出しを、従来の約1時間から5~10分に短縮した。オーテル・インテリジェント・テクノロジー(周秋芳社長、横浜市港北区)の新製品「IA1000WA」は、ターゲットを自動で設定する「デジパネエーミング」などの新たな機能を搭載。また、「ダイナミックビューポジショニング」機能により、ドアミラー下部に内蔵されたカメラのエーミングにも対応している。

 外観の確認も、将来は車をスキャナーで通すだけになりそうだ。双日は車体の傷や修理に伴う再塗装を検知する外装スキャナーを初披露した。人間の目で判別するのが難しい白やパールなどの再塗装も、人工知能(AI)により確実に見つけられるという。JU岐阜羽島オートオークション(熊崎尚樹社長、岐阜県羽島市)の出品車両を用いた実証実験を10月に始める計画だ。

 バンザイ(柳田昌宏社長、東京都港区)が参考出品した「ADIビークルスキャナー」も、ドーム状のスキャナーに車を通すことで車体の傷などを確認できる。別製品のアンダースキャナーと併用すれば、下回りを含め車体を360度でチェック可能。板金塗装(BP)や新車の納車前整備(PDI)などでの使用を想定しているが、国内発売は未定。

 このほか、整備士の負担軽減を考慮したものも多い。例えば、アルティア(浜本雅夫社長、東京都中央区)の重量物を運べる「イージームーバー」は、リアタイヤを後ろから押すと1人でもトラックや低床バスの車体を前に動かせる。安全自動車(中谷宗平社長、東京都港区)は、本荘興産(平井新一社長、岡山県倉敷市)のプロ向け洗車ツール「ウオッシュマン」のトラック版を披露。モップの長さをワンタッチで変えられるため、大型車の洗車でも姿勢を一定に保てる。

 三協リール(三木健太郎社長、千葉市稲毛区)は、ホース類をゆっくり巻き取る「スローモーション仕様」を大型モデルに拡大したものを参考出品した。通常は長さ15㍍のホース類を1、2秒で巻き取れるが、1㍍につき1秒と遅くした。作業中の安全を考慮したい整備現場の声に応えたという。

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