「思うように成果が出ない」「販売計画がキツイ」「お客さまとの信頼関係がうまく築けない」などと、自動車販売店で若手スタッフの声をよく耳にしますが、こうした悩みは表面上の問題にしか過ぎないのではと思われます。若手スタッフと本音で語り合うと、実は「自分はこの仕事に向いていないのかもしれない」「自分はこの会社でキャリアアップビジョンが見えない」というように、自己肯定感や将来への不安や悩みが隠れています。
たしかに自動車販売店の現場では、常に数字を求められるのが宿命です。しかし経験が浅い時期には、周りの同期や他のスタッフと自分を比べてしまい、上手くいかないことを自己否定してしまいがちになります。公共交通機関の発達や技術進化、さらに若者のクルマ離れなどが相まり、昔のように来店されたお客さまが即成約ということが減ってきたことは事実です。
他にも、お客さまのニーズが時代とともに変化し、より複雑なものとなり、完璧な商品説明だけではなく、ライフスタイルに寄り添った提案力も求められるようになってきました。このような状況についていけず、モチベーションが下がってしまう若手スタッフは少なくありません。
そんな悩みを抱えている若者に伝えたいです。焦る必要がないことを。今の時代、自動車販売店は単なるモノを売るだけではなくなり、お客さまとの信頼関係を築いていく人間力が必要となる仕事になりました。周りの人でも、どんなに偉大な人であっても、最初から完璧な人なんてこの世にはいません。
大切なことは、自分のフォーマットを探すことです。お客さまとの雑談でクルマ以外のことを会話をして信頼関係を深めたり、誰よりも心のこもった納車式を行う。そういったことも、お客さまの信頼を得るための大きな一歩となります。
あなたはどんなことが得意ですか?
若手だからこそできる強みがあるはずです。例えば、年の離れた中高年スタッフよりSNS(会員制交流サイト)やデジタルに長けている人が多いと思います。そのスキルを使ってお客さまに情報を発信したり、集客を目指す活動で会社に貢献することができます。イラストが得意で、納車するクルマを描いてお客さまにプレゼントする若手スタッフもいます。
自分の強みを現場で生かして仕事を広げていく-。その発想こそが、キャリアアップにつながっていきます。
仕事でさまざまな悩みを抱えているかも知れませんが、悩むことは決して悪いことではありません。悩んだことを考えると、新たな視点が見つかることもあります。つまり、悩むことで人間は成長していくのです。悩んだ分だけ学びがあるのです。むしろ、自分の前に立ちはだかる悩みという壁は、自分を成長させるチャンスだと捉えていきましょう。
あなたの強みや得意なこと。案外それが仕事で成果を出し、仕事を楽しくさせてくれるポイントかもしれませんよ。
文:株式会社プログレス 江原忠宏
〈プロフィル〉えはら・ただひろ 2006年東海大学電子情報学部卒、同年国産ディーラー入社。営業職、店長を務めるも、17年5月輸入車ディーラーに転職。入社2年目に係長昇進、3年連続で販売優秀者表彰。その後人材育成にやりがいを見出し、20年プログレス入社。「人材を『人財』に」をテーマに活動中。静岡県出身、41歳。