公正取引委員会(公取委)によると、2024年度の下請代金支払遅延等防止法(下請法)違反による勧告件数は21件となり、平成以降で過去最多だった。自動車関連企業の勧告件数も5件あった。不当な減額要求に加え、金型の無償保管を下請け企業に強いたとして勧告を受けた事例が増えた。
昨年度、実施した勧告のうち9件が金型の無償保管に関するものだった。自動車関連では、トヨタカスタマイジング&ディベロップメント、東京ラヂエーター製造、中央発條、愛知機械工業などが金型取引に関連し勧告を受けた。
23年度にはサンデン、ニデックテクノモータなども金型の無償保管で勧告を受けたほか、今年度に入ってからはカヤバも同様の事例で勧告を受けた。04年の下請法改正により、金型の無償保管は違反行為として明確化されたが「保管費用は部品の単価に含まれていると誤って認識していた」(中央発條)など、従来の取引慣行を疑問に思わない企業もあり、意識改革をどう促すかが課題になりそうだ。
全業種における実体規定違反(7177件)の内訳としては、6割近くが「支払遅延」だった。正当な理由なく支払金額を減らす「減額」や、立場を利用して著しく低い支払金額を設定する「買い叩き」も3割近くを占めており、取引代金に関連する事例が大半を占めた。自動車業界でも、日産自動車やメタルテックなどが同様の事例で23年度に勧告を受けた。
中小・小規模(零細)企業が賃上げやデジタル投資の原資を確保する上でも、取引適正化の重要性が高まっている。発注側には法令順守の再徹底とともに、商慣行の積極的な見直しが求められる。