シューズやウエアなど多彩なデザインも企業の導入意欲に
風を通しにくいウエア(ブロアーによる実験の様子)

 スポーツ用品メーカーのミズノが、作業着などのワークビジネス事業を拡大している。スポーツ向けで培った技術とブランド力を生かし、対象業種やラインアップを強化しており、製造や建設、運輸業ではリクルートや労働災害への対策として、デザインや機能が充実した各種製品の採用を進めている。ワークビジネス事業部の箕輪陽一次長は、「機能性と(子どもの頃に触れたことがある)ブランドへの親しみで、エンゲージメントの向上に貢献していきたい」と話す。

 ミズノが手掛けるワークビジネスの製品には、ウエアやシューズ、ギアなどがそろう。ウエアは企業ユニフォームのほか、小売り向けのジャケットやパンツなどが主力だ。代表的な技術に、作業時の動きやすさを追求したウエア設計「ダイナモーションフィット」がある。3DCG(3次元コンピューターグラフィックス)と解剖学を組み合わせた手法で、かがんだり、荷物を持ち上げたりする動作を解析。動作時に脇やひざ周りでのひきつれや圧迫感を軽減する設計で、作業効率の向上を可能にしている。スポーツ選手の能力を最大限引き出すための工夫が働く人向けにも応用されている。

 設計だけではなく、素材にもこだわる。汗を吸収して発熱する保温素材や、寒風を通しづらい生地の接着処方なども独自に保有。暑さ対策では電流を流すと片面が冷却(もう片面は加熱)する電子デバイスを使ったベストなども開発している。

 足元を守るシューズは、つま先を保護する先芯が入ったいわゆる安全靴などをそろえる。ローカット・ミッドカットのそれぞれに対応するダイヤル式フィットシステムや、水や油がソールの溝にたまりにくい「アウトソール」などの機能も充実させている。スポーツ向けで培われた多彩なデザインも特徴だ。1月には片方(サイズは26㌢㍍)が、約295㌘と同社最軽量の安全靴を発売した。PRにも力を入れており、社員が同シューズを履いて大阪マラソンに挑戦する様子をSNS(会員制交流サイト)で発信。レースは完走した。

 バッグや各種プロテクターも手掛けている。バッグのストラップには縦方向に切り込みを入れる「スプリットストラップ」構造を採用。肩に掛かる圧力を左右に分散して重量を軽く感じさせるほか、切り込み部分が開閉することで腕の上げ下ろしの動作にフィットしやすくした。この構造を採用したバッグは野球日本代表などでも用いられている。プロテクター類は野球用具を参考にしており、膝をつく作業や安全靴では保護できない甲やアキレス腱をそれぞれカバーするものを用意。工業用コンテナの落下や台車の衝突による被害を軽減する。

 同社は1997年に企業ユニフォームの別注に関する企画・販売専門部門を設置。2016年にワークシューズ、18年にアパレルの販売を開始し、19年にはワークビジネス事業部を発足した。労働安全衛生や職場の魅力向上で企業などの支持を集めており、27年度には売上高180億円を目指している。

(村上 貴規)