【スペイン・タラゴナ=山本晃一】韓国・現代自動車グループのキアが、改めて日本市場への参入を発表する舞台となったのはスペイン。新しいグローバル事業戦略「プラットフォーム・ビヨンド・ビークル(PBV)」の進展を2月27日、発表した。旅客や物流、キャンピング、福祉など多目的な電気自動車(EV)として、韓国に加えて日本や欧州、カナダに投入する。「日本での展開の一歩目に過ぎない」(幹部)と、控えめな言い方の中にも意欲を見せる。
スペインのカタルーニャ州タラゴナで今週、メディア向けの「EVデー」を開いた。同様のイベントはソウルで2023年に開いて以来2回目。特に欧州市場を開拓する狙いからスペインを会場に選んだ。グローバルの数十カ国から160人規模のメディア関係者が参加。特にEU(欧州連合)域内の参加が多く、EVへの関心の高さとともに、同社の熱の入れ方が示された。
キアは30年のEV販売について、24年比で約5倍の160万台にする目標を掲げる。その柱の1つとしてとして位置づけるのがPBVだ。24年に米ラスベガスで開催された「CES」でコンセプトモデルを発表していた。
生産にあたっては、韓国に専用工場を設置。コンベアシステムとセル方式の両方を利用し、柔軟で効率的な生産プロセスを目指す。カスタマイズ車両の生産を行う「コンバージョンセンター」も設立。時間やコスト節減、廃棄物抑制などにつなげる。
当面の生産能力は15万台で、30年には25万台を目指す。モデルも今後さらに拡充する予定で、2年後に「PV7」、さらに2年後に「PV9」を投入する計画としている。
連携が内定した事業者はすでに約100社あり、米ウーバー・テクノロジーズやDHLといった大手が連携を決めている。キアは、こうした協業を通じて顧客のニーズを蓄積し、開発のノウハウや技術を高めてきた。日本でも複数の連携先が潜在的な顧客にもなっている。
EVデーでは、他のラインナップも発表された。「EV4」は、初のEVセダンおよびハッチバックモデル。また「コンセプトEV2」 はSUV。これら新しいラインアップの発表を通じて、「世界をリードするEVブランドを目指す」としている。これらの製品について当面は日本市場に投入する計画はないというが、こうした拡充を進めることで、後発ながらEVを手掛けるグローバルメーカーの中でも、ラインナップは最も豊富な部類になるという。