トヨタ自動車は、燃料電池(FC)トラック向けの大型高圧水素タンク4本を使用し、気体水素を約36㌔㌘搭載できる水素貯蔵モジュールを開発した。FC乗用車「ミライ」向けの水素タンクを組み合わせていた従来の水素貯蔵モジュールに比べ、商用車向け大型タンクを採用することで貯蔵量を3倍以上に増やした。大型化した水素貯蔵モジュールを実用化し、定置型発電機をはじめ、フォークリフトや建機、船舶など水素エネルギーの利用を広げる狙いだ。
11月下旬に開かれた世界ラリー選手権(WRC)最終戦「ラリージャパン2024」で、トヨタチームが愛知県豊田市に設置したサービスパークに電力を供給するFC発電機と大型水素貯蔵モジュールを導入した。トヨタは22年のラリージャパンからサービスパークに水素エネルギーを導入しており、全体の50%弱をFC発電で賄っていた。従来は金属製の「カードル」から水素を供給していたが、今年は高耐圧の水素タンクに変更したことで貯蔵量が拡大した。FC発電機の信頼性も高まったことから、今年は水素エネルギーの活用を7割程度まで引き上げたという。
新たな水素貯蔵モジュールは、商用車向け技術企画会社のコマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーズ(CJPT、中嶋裕樹社長、東京都文京区)が開発するFCトラックに搭載する水素タンクを採用する。ミライはサイズの異なる水素タンクを3本搭載し合計で5.6㌔㌘を貯蔵できるが、商用車向けに開発した水素タンクは1本で約9㌔㌘貯蔵できる。FCトラック向けのタンクを4本組み合わせることで36㌔㌘貯蔵できるようになり、単純計算でミライ6台分の水素充填が可能となる。
商用車向けの大型水素タンクは、ミライで培った技術を活用している。水素の透過や漏れを防ぐために内側を樹脂ライナーと呼ばれる特殊な容器で密閉し、約700気圧(70㍋ パスカル )の高圧に耐えられるよう炭素繊維強化プラスチック(CFRP)とガラス繊維強化プラスチック(GFRP)を容器に巻き付けることで強度と軽さを高次元で両立させている。水素貯蔵モジュールはFC車の水素タンクを組み合わせているため、技術的には水素ステーションでの水素充填が可能だが、車両以外の利用は認められておらず、今後の普及には関連法規の見直しが欠かせない。
ラリージャパンで使用したFC発電機も前年より小型化・静音化した。大型化した水素貯蔵モジュールと組み合わせ、25年のラリージャパンではFC発電によるサービスパークの電力供給率100%を目指す。また、こうした仕組みをパッケージ化し、海外の転戦先でも日本と同様にサービスパークの脱炭素化に取り組む方針だ。