自車の制限速度の超過を認識して速度を制御する、自動速度制御装置(ISA)の実用化が模索されている。欧州では7月から全ての新規登録車にISAの装着が義務付けられ、日本でも2019年に国土交通省が「基本設計書」をまとめている。だが、制限速度を認識する技術や社会受容性などの問題があり、現状は制限速度の警告機能の実用化程度にとどまっている。速度超過による重大事故の抑止効果が期待される一方、課題は多く、実用化への道筋は見えていないのが実情だ。
一般的にISAはカメラなどを使って走行地点の制限速度を認識し、(1)警報を出す(2)ドライバーの選択肢を残しつつ車両が速度を制御する(3)機能が常時オンとなり制限速度を上回らないようにする(4)アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)を用いて走行速度を制限速度に自動設定する―の4つのタイプに分類できる。欧州では一般安全規則(GSR)で24年7月以降、ISAの搭載が義務化された。ただし現状は、認識した制限速度を液晶ディスプレー上に表示したり、視覚や音で警告するシステムにとどまっている。
国交省は16年に長野県軽井沢町で発生したスキーバス事故などを踏まえ、車両側が速度を制御する(2)以上をISAと定義し、16~20年度の第6期先進安全自動車(ASV)推進計画で「基本設計書」を策定した。
一方、導入に当たっては制限速度の認識技術や、場所によっては制限速度と実勢速度に乖離(かいり)があるといった課題がある。このため国交省は、昨年3月までに「速度支援装置(SAS)」に関する技術指針を自動車メーカーに対して通達。認識した制限速度の表示や速度超過の報知機能に対する考え方を示した。視覚と音で速度超過を伝えるトヨタ自動車の「ロードサインアシスト」など、すでに一部で導入が始まっている。
警視庁の統計では、20~22年の3年間で、規制速度の超過で起きた事故は都内の交通事故の3.4%だったものの、死亡事故に占める割合は24.7%に達した。ドライバーに制限速度を遵守させることで死傷者数を減らす効果が期待できるものの、操作に介入する運転支援システムは現状、ペダル踏み間違い時加速抑制装置など一部に限られる。自動車メーカー各社は、まずはSASへの対応を進め、重大事故防止に効果的な手法を模索していく。