交通事故死者数ゼロに向けて自動車メーカー各社が開発を進める安全技術。システムが運転の主体になる自動運転の実用化にも期待される一方、課題も多いだけに、先進運転支援システム(ADAS)の進化やさらなる普及が、事故抑制や被害低減のカギを握る。実際、定速走行・車間距離制御装置(ACC)や車線維持支援制御装置(LKAS)はもはや一般的となり、ハンズオフ機能や車線変更支援など高度な運転支援機能も珍しくなくなった。ただ、その精度や操作性、自動車メーカーの設計思想は実際に乗ってみなければ分からない。軽自動車から高級輸入車まで各社の最新モデルを一気乗りし、ADASの〝現在地〟を体感した。
◆記者の主観評価◆
【トヨタ「クラウンFCEV」】
〈GOOD〉
・ハンズオフ走行の挙動がなめらか。オフになる際の表示も分かりやすい(E)
・PDA(プロアクティブドライビングアシスト)は「プリウス」より減速が緩やか(B)
・ステアリングアシストの動きはスムーズ。カクカクしない(A)
〈BAD〉
・ACCの速度設定調整がストロークの大きなボタン式で使いづらい(B)
・作動条件が厳しいのか、アドバンストドライブの作動率が低かった(C)
・認識した標識や作動中の機能の表示が小さい。高齢ドライバーに優しくない(A)
【日産「アリア」】
〈GOOD〉
・速度標識を検知してACCを自動で規制速度以下に変更している!ISA(自動速度制御装置)の片鱗を見た…(A)
・ハンズオフ中は青色主体の表示になり、機能のオンオフが一目瞭然(E)
・「車速作動範囲外」などADASを使用できない訳を説明してくれる点は親切(D)
〈BAD〉
・ACC中に標識を検知すると勝手に制限速度に変更されてしまう(B)
・地図データエリア対象外でハンズオフが急にオフになるので困惑する(E)
・自動車線変更は作動するまでかなり慎重だが開始後はためらいがないので怖い場面も(D)
【スバル「レヴォーグ」】
〈GOOD〉
・メーターのアイコンにウインカーやストップランプが実車同様に表示される(A)
・渋滞時の割り込みへの対応が素晴らしい(B)
・ACC作動時、渋滞で停車するまでの減速がちょうど良い塩梅(D)
〈BAD〉
・LKASは右側に寄っていく印象を抱いた(E)
・ステアリングスイッチは大きくて良いが、多すぎる印象(A)
・全体的にADAS関連の表示はわかりやすいが、もう少し洗練さが欲しい(B)
【BMW「i5」】
〈GOOD〉
・標識を認識してACCを制限速度に設定するように「推奨」するのは良い機能(B)
・条件が整えば自動でハンズオフを開始できる(D)
・ACCは車線をまっすぐ走る印象。おそらくシャシー性能の高さが奏効(E)
〈BAD〉
・LKASは、首都高を走る限りでは、車線の認識性能があまり良くない(B)
・ハンズオフ機能をオンにする手順がわかりにくい印象(E)
・ハンズオフがなかなか作動しなかった。それ以外の機能の精度は高い(C)
◆試乗概要◆
試乗は今夏、日刊自動車新聞の記者5人が、国内外の計9台を対象に実施した。自動車専用道路ではアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)やハンズオフ機能を、一般道では車線維持支援機能などを試し、その有用性や乗り心地を試した。5人の記者の属性は以下の通り。
・記者A=58歳、免許取得歴40年。二輪も含め週末ドライブが中心
・記者B=47歳、男性、免許取得歴28年。運転頻度は週4、5回で、月1200㌔㍍程度走行
・記者C=38歳、免許取得歴14年。運転頻度は週末のみで、長距離も運転する
・記者D=35歳、男性、免許取得歴15年。運転頻度は週末のみ、近場の移動中心
・記者E=32歳、男性、免許取得歴12年。運転頻度は月に一度、レンタカーを運転する程度
◆試乗コース◆
日刊自動車新聞社本社がある東京都港区芝大門周辺を発着点に、約15㌔㍍の距離を45分程度かけて走行した。首都高速道路を「芝公園」から「晴海」まで走行し、ハンズオフ機能などを試した。中央区築地周辺から東京メトロ虎ノ門ヒルズ駅周辺は「築地虎ノ門トンネル」を通過し、暗所や夜間の運転支援技術を確認した。