車載電池用銅箔を手がける日本電解は11月27日、東京地方裁判所に民事再生法の適用を申請し、保全・監督命令を受けたと発表した。負債総額は約148億円。米インフレ抑制法(IRA法)による日本製電池の輸出減少のほか、北米での電気自動車(EV)の需要減退やスマートフォン需要の低下などにより米子会社の赤字が常態化するなど、経営環境が急速に悪化していた。今後は事業を継承するスポンサー探しを進めていく。
当面の事業継続に必要な資金として、再生手続きを開始した企業に当面の運転資金などを融資する「DIPファイナンス」で三井住友銀行から20億円の融資枠の設定を受けた。
日本電解は、日米の車載電池メーカーや回路基板メーカーなど向けに電解銅箔を製造、販売してきた。近年は北米でのEV市場拡大を狙い、20年3月に三井金属鉱業から電解銅箔を製造する米子会社の全株式を取得。さらに21年6月には東証マザーズ(現・東証グロース)に上場するなど業容を拡大してきた。
しかし、世界的な半導体不足やIRA法による輸出需要の減退に加えて、北米でのEV販売が停滞したことで、23年3月期の連結売上高は前期比17.1%減の170億円に減少し、16億円の営業損益を計上した。さらに米子会社のカンデム工場(サウスカロライナ州)では整流器の故障により銅箔の生産能力が低下して販売が減少。また、ジョージア州で進めていたオーガスタ工場では設コスト上昇やその後の建設計画見直しに伴う損失なども発生し、キャッシュフローが悪化していた。
収益改善の見込みが乏しい米子会社は、同日開催した取締役会において解散する方針を決議。解散日は未定で、米子会社の貸付金の大部分は回収困難となる見通し。これに伴い日本電解は多額の特別損失を計上し、実質債務超過となった。
民事再生法申請に伴い、29日に開催予定の臨時株主総会も中止する。