高機能素材ウィーク内で開催されている高機能フィルム展
デクセリアルズの反射防止フィルムなどが使用されたディスプレーデモ機
東亜電気工業の各種拡散フィルムが貼られたデバイス
麗光の薄膜遮音フィルム

 ヘッドアップディスプレー(HUD)用のフィルムを手掛ける部品メーカー各社が、高機能品の開発で培った技術やノウハウを活用し、車載カメラや遮音材など別の自動車部品向け需要獲得に乗り出している。カーナビゲーションシステムに加え、メーターパネルも車載ディスプレーの採用が進んでおり、フィルムの需要は当面伸びるとみられている。こうした中でも軽量で薄く、さまざまな機能を付与できるフィルムの特徴を生かせるディスプレー以外のニーズをいち早く取り組むことで、強固な事業基盤の構築につなげる狙いだ。

 幕張メッセ(千葉市美浜区)を会場に行われた展示会「高機能素材ウィーク」(会期=10月29~31日)でも、出展したフィルムメーカーはディスプレー以外の多様な用途を提案していた。

 例えば、HUD向けに拡散フィルムなどを供給しているデクセリアルズは、開発中のアイトラッキング用カメラに使う赤外線高透過タイプの反射防止フィルムを展示。同カメラはドライバーの視線や開眼度などを測定することで、車両制御に生かすもの。フィルムはカバーガラスに装着する。認識性能を高めるために必要な赤外線の透過率は、90%以上を達成。今後も、精度向上に取り組み、カメラサプライヤーなどからの受注獲得を目指す。

 光を均一に照らす効果がある拡散フィルムを取り扱う東亜電気工業(重田明生社長、東京都千代田区)は2、3年前から、リアランプ向けにも拡散フィルムの提供を始めた。ランプの形状や加工工程に柔軟に対応できたことが採用につながったという。足元の拡散フィルムの売上高のうち、約50%を自動車向けが占めるが、今後も車載ディスプレーとそれ以外の両軸で、光拡散フィルムの需要を獲得していく考えだ。

 意匠フィルムなどの麗光(岩井順一社長、京都市右京区)は、車両の静粛性向上につながる薄膜遮音フィルムを開発している。ミクロン単位の薄さとコストの最適化を目指しており、まずは民生機器向けで2024年度にもサンプル出荷を開始する予定だ。同社では車両用としての供給も視野に入れており、高音領域の異音を低減できる特性を生かし、モーター周りの吸音材などを想定している。同社が実施した防音性能の試験では60デシベルのノイズが、40デシベルまで低減できた。これは乗用車の走行中の車内音が、図書館内のレベルになったのと同程度だという。今後、耐熱性などの耐久性評価を実施し、製品化を急ぐ。

(梅田 大希)